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目撃者の証言:「ガザに食料を届ける準備はできている。ただ、許可が下りるのを待っているだけだ」

新たな報告書で、ガザの住民が飢餓状態から飢きんへと悪化していることが確認された。パン工場では機械が埃をかぶり、温かい食事を提供するはずの場所では鍋が空のままだ。
, WFP Staff
A girl looks into her camera from behind her mother who is holding up a flatbread and a pack pasta
母親が砕いたパスタから作ったパンを持つそばで、娘がそれを見つめている。ガザの市場が空っぽになった今、このような必死の手段すら次第に不可能になってきている。写真:WFP/Ali Jadallah

最新ニュース: - 2か月ぶりに焼きたてのパン 夜間に届いた限られた物資で一部のパン工場が再開 | World Food Programme


ガザでは、すべての支援が32日以降途絶えており、人びとは飢餓の危機にさらされています。先週発表された、国連機関およびNGO17団体による報告書では、47万人が壊滅的な飢餓(食料不安を測る国際基準である「総合的食料安全保障フェーズ分類、IPC」のフェーズ5)に直面しているとしています。また、71,000人の子どもと17,000人以上の妊娠・授乳中の女性が、急性栄養不良のために緊急治療を必要とする見通しです。

以下では、WFP国連世界食糧計画のスタッフ3人がそれぞれの視点を語ります。2人は5月にガザ中心部のディール・アル=バラを訪れ、もう1人はガザ出身です。


 

「私たちは、人びとがいる場所で迅速に支援を届けなければならない」

アントワーヌ・ルナール(WFPパレスチナ事務所代表)

People look on in a bakery at a diagonal round flatbread rolls by on a conveyor belt
WFPパレスチナ事務所のアントワーヌ・ルナール代表は、2024年10月にハン・ユニスのパン屋を訪問。写真:WFP/Ali Jadallah

WFPが支援していた25のパン工場のネットワークが閉鎖されて以来、私たちはパンの供給を維持するうえで深刻な困難に直面しています。その理由は、小麦粉がまったく足りないからです。

ガザにおいてパンがないということの文化的な意味は計り知れません。パンは命そのものです。ある人は私にこう言いました。「パンがなければ、ガザではない」と。

家庭では、子どもたちにパンのようなものを食べさせるために、パスタを砕いて粉にしています。

A man holds a flatbread in front of a makeshift stove in a refugee camp
人びとは、最後の備蓄を使い果たそうとしています。写真:WFP/Ali Jadallah

戦闘は318日に再開されました。燃料も食料もなく、供給網は崩壊し、人びとは「明日、私たちは食事をとれるのか?」と自問しています。

かつてWFPは手頃な価格でパンを提供していました。21枚入りのパンの束は23シェケル(1米ドル未満)で買うことができました。しかし今では、小麦粉25kgの袋が500米ドル以上もします。しかも、その小麦粉の品質は著しく劣化している可能性があります。

止まっているのは人道支援だけではありません。商業物資の搬入もありません。民間セクターは商業物資に依存しています。ガザの人びとが生き延びるために人道支援機関に頼らなければならない状況は、本来あってはならないのです。

A hand painted WFP sign with, in Arabic, World Food Programme on the door of a bakery where a man posts a closure announcement on an A4 sheet
男性がガザのパン工場の扉に閉店の張り紙を貼っている。3月2日以降、この地域には一切の食料が届いていない。写真:WFP

WFPは国境封鎖の解除を強く求めています。食料パッケージの搬入が必要ですが、それだけでは十分ではありません。人々には、長い間不足している新鮮な食料も必要です。

飢きんのリスクは非常に高まっています。2週間前までは、180か所の人道支援機関が運営している炊き出し所が稼働しており、100万人に食事を提供していました。しかし現在、稼働しているのはわずか61か所で、支援を受けられるのは25万人にも満たない状況です。

これは到底、容認できません。人々は移動することもできず、交通手段を確保する余裕もありません。今の状況では市場に行くのも危険です。襲撃を受けたり、ギャングに遭遇したり、爆撃されるおそれすらあるのです。

私たちは、人々がいる場所で、迅速に支援を届ける必要があります。


 

「少年は、最後のおもちゃを売って一切れのパンを買いました」

ケイト・ニュートン(WFPパレスチナ事務所副代表)

WFP staff in UN flak jackets sit cross-legged as they meet a family inside a humanitarian blue shelter in Gaza.
ケイト・ニュートン副代表(右)とWFPの同僚たちが、ガザの人道支援用テントで現地の家族と面会している様子。写真:WFP

私たちはガザ地区を回り、一貫して食料がないことを目の当たりにしてきました。人びとのテントにも入り、彼らは調理用の鍋を見せてくれました。

今では、人びとが毎晩空腹のまま眠りにつき、飢え始める深刻な危険があることは確実です。瓦礫の中やテントで、調理設備もなく暮らしています。

ある女性は、まだ営業している温かい食事の炊き出し所に行ったところ、米さえなかったと話してくれました。彼女が5人家族に持ち帰れたのは、豆が16粒入ったスープの鍋一つだけでした。

Empty coooking pots at closed hot meals point n Gaza
停戦期間中、WFPはガザ全域で100万人に温かい食事を提供しました。写真:WFP/Ali Jadallah

ここには本当の飢餓があります。私たちは非常に深刻に懸念しています。32日以前、WFPはガザで毎日100万人に温かい食事を提供していました。しかし現在は、ディール・アル=バラとハンユニスの2か所の炊き出し所で、25,000人未満にしか提供できていません。

つまり、必死に飢えている人々の半数にも満たない人しか、私たちから温かい食事を受け取れていないのです。人々は食料の備蓄もなく、現金もほとんど持っておらず、市場も空っぽです。

スタッフが家族から聞く話は胸が張り裂ける思いです。たとえば、最後のおもちゃを売ってパンを手に入れた小さな少年の話などです。WFPはガザに届けるための食料を十分に用意しています。ガザ地区外に備蓄があり、簡単かつ迅速に搬入することが可能です。ただ、それを実行するための支援が必要なのです。


 

「飢きんは一夜にして起きるものではない」

ヌール・ハマッド(WFPパレスチナ事務所人道支援担当)

WFP's Nour Hammad (R) speaks to women collecting our assistance. Photo: WFP
ヌール・ハマッド氏(右)が、2024年にガザの食料配給所で人々と話している様子。写真:WFP

当初、国境の閉鎖は12日で終わると思っていました。しかし、この危機が長期化する可能性があることがすぐに分かりました。32日以降、WFPは残りわずかな食料を最大限に活用し、できるだけ多くの家族に届けようと懸命に取り組んできました。

318日に空爆が再開されると、戦争が再び始まったことが実感しました。3月初旬には、市場にはまだ多くの商品が並んでいました。私もチーズやスナック、日用品を見て購入したことを覚えています。しかし3月末にはそんな商品も姿を消し始め、より多くの人々がWFPに支援を求めるようになりました。

View of crushed burnt-out car atop a pile of rubble
瓦礫の中に残された不発弾が、ガザの人々が直面する多くの課題をさらに増やしています。WFP/Suzanne Fenton

41日に、とても衝撃的なことが起こりました。支援していたすべてのパン工場が閉鎖されたのです。人々は恐怖に包まれました。もし、この地域で最大の人道支援機関がパン工場を営業させ続けることができず、食卓からパンがなくなったら、次は何が起こるのか?

4月に入ると、物資に底をつき始めました。ゆっくりと、しかし確実に生活必需品が無くなっていったのです。小麦粉や植物油などの備蓄が無くなるようになりました。スーパーは次々と閉店し、人々は不安を募らせました。これは、ガザ地区全体に広がる不確かな未来と厳しい現実を浮き彫りにしました。

4月第3週には、すでに何も残っていない家族も出てきており、より多くの人びとが温かい食事を求めて炊き出し所に向かっています。多くの人びとは缶詰や、配給所の残り物に頼っています。

5月の第1週は惨状でした。私たちが支援している人々は、極限まで切り詰めざるを得なくなっていました。

A wrecked street in Gaza, with collapsed buildings and debris stretching behind. Residents move through the ruins, some on donkey carts, others on foot, amid makeshift shelters and grey skies
2月、ガザ北部のベイト・ラヒア周辺。壊滅的な状況の中で、人々が食料を受け取っている。写真: WFP/Suzanne Fenton

市場で見つかるのは、腐って害虫が湧き、想像を絶する悪臭を放っている小麦粉だけでした。でも、それしかないのなら、それを使うしかないのです。

私たちは、こうした極度の物資不足の中で人々の声に耳を傾け、ニーズをより深く理解するために、現地での調査活動を増やし始めました。

ほとんど何もない中で、人々は何とか食卓に何かを並べようとしています。母親たちは、わずかに残った食べ物を子どもに食べさせるために自分の食事を抜き、めまいや疲労感に苦しんでいます。

Suliman and one of his children amid the rubble of Khan Younis in Gaza. New expert findings show the enclave risks extreme hunger in the coming months. Photo: WFP/Ali Jadallah
3月2日の国境封鎖と3月18日の軍事作戦再開により、ガザの人びとは奈落の底へと突き落とされています。写真: WFP/Ali Jadallah 

親たちは、夕食を探さなくて済むように、子どもたちを早く寝かせます。国境封鎖が続く中、ここにいるパレスチナの人びとから「これはゆっくりと進む死刑宣告のようだ」という声をよく聞きます。

飢きんは一夜にして起こるものではありません。食料へのアクセスを少しずつ失い、次に体重が減り、最後に体力を失っていきます。

そして、人道支援に携わる私たちにとって最も胸を締めつけられるのは、「空爆で死んだほうがまだマシだ。空腹に苦しみながら、子どもに次の食事のことを嘘でごまかすほうがよっぽどつらい」と語る人びとの言葉です。

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