母子にとっての母乳育児の5つの利点とは
5歳未満の子どもの3人に1人以上が栄養不良に陥った状況では、母乳育児が赤ちゃんや幼児に必要な栄養を確保する重要な手段となっています。
これまでにないニーズが存在する中、世界的な飢餓の危機に対応するため、国連WFPは母乳育児を国際的に支援し、妊娠中や授乳中の女性の栄養不良の予防や治療のため、栄養強化食品を提供しています。
国連WFPは母親や地域社会に対し、文字どおり命綱となる栄養教育を実施しており、母乳育児により病気に対する免疫をつけることができ、新生児だけでなくある程度大きくなった子どもたちにとっても利点があることなどを伝えています。
1) 子どもの健康と生存の要となる
特に重要な生後6ヶ月を母乳のみで育った子どもは生き延びる可能性が高くなります。
食料が不足している環境では乳幼児の死亡率が最も高くなります。例えば2011年にソマリアで発生した飢きんでは、防げたはずの死による推定死者数の半数以上は5歳未満の子どもでした。
初乳(初めて乳腺から分泌される母乳)は子どもにとって最初のワクチンとも言われ、命に関わる病気から子どもを守るために欠かせないものです。
2) 母乳育児には生涯続く効果がある
赤ちゃんがおなかの中にいる時から2歳になるまでに受けた栄養は、発育やおとなになってからの健康を大きく左右します。世界保健機関は生後6ヶ月までは母乳のみで育児を行い、その後少なくとも2歳になるまで授乳を続けることを推奨しています。
赤ちゃんの時に母乳で育った思春期までの子どもたちは太り過ぎや肥満になりにくくなります。学校の出席率も上がるため、成績もよくなります。母乳育児は「人的資本」への投資となります。
国民の健康、能力、知識、経験の総体である人的資本の形成は持続的でインクルーシブな長期的経済成長の主要な推進材料として認知されつつあります。母乳育児が不十分な場合、生産性の低下や医療費により世界経済にとって1日あたり10億米ドル近くの損失となります。
3) 赤ちゃんだけでなくお母さんにもメリットがある
授乳は女性にとってがんや産後うつのリスクの低下につながります。天然の癒やしホルモンを分泌することで、母親のストレスを軽減し、赤ちゃんも落ち着かせる効果があります。ニジェールに住む6児の母バルキさんの家族は幾度も干ばつを耐え抜いてきました。
国連WFPは、授乳中に必要なビタミンやミネラルを含む粥を支給し、栄養を高めるための方法も伝授しました。「体に変化を感じ、子どもも元気になりました」とバルキさんは言います。「このプロジェクトの前に妊娠した子どもは、その後に生まれた子どもより健康も体力もかなり低いことにも気づきました」
さらに続けて「以前は母乳だけで育児を行うことが大切だと知りませんでしたが、国連WFPの支援で授乳の大切さを知ることができたおかげで、子どもたちは病気にかからなくなり、格段に元気になりました」と話しました。
4) 赤ちゃんの健康は社会全体のメリットに
母乳育児の推進は、国が将来の繁栄のために行える最も賢明な投資の一つです。母乳育児の推進、擁護に対する投資は1米ドルあたり、最大35米ドルの経済効果を生みます。発育阻害、妊娠・出産可能年齢の女性の貧血、低出生体重、子どもの過体重、消耗症に対する取り組みなど世界の栄養目標の達成に向け、母乳育児率を向上させることが重要です。
5) 母乳育児は家族を支える力に
母乳は生後6ヶ月までの赤ちゃんに必要なあらゆるエネルギーと栄養を与えることができます。さらに6〜12ヶ月の子どものエネルギーや質の高い栄養の半分以上、12〜24ヶ月の子どもの最大3分の1をカバーします。
母乳育児の擁護、推進、支援は、どこでも、特に危機的状況の中では赤ちゃんの命を救う手段になります。
非常事態下では、授乳がより困難になり、特別な配慮や実際的な支援が必要となります。困難な状況ではほとんどの場合、母乳育児が乳児にとって望ましい方法となります。