Skip to main content

国連WFP協会 会長 安藤宏基 パレスチナ緊急食糧支援 食品界500社に支援求む

2024年4月29日掲載 日本食糧新聞の記事です。
, 国連WFP協会
国連WFP協会 会長 安藤 宏基
国連WFP協会 会長 安藤宏基
ガザ地区110万人「壊滅的飢餓」に

WFP国連世界食糧計画(国連WFP)は、パレスチナで食料を十分に確保できない人々がガザ地区の人口220万人のほぼ半数に達し、飢饉(ききん)が差し迫っているとの見通しを示し、国際社会に支援を呼び掛けている。前例のない危機には前例のない対応が必要であり、迅速かつ効果的に対応しなければ、餓死によって多くの命が失われると指摘されている。この緊急事態ともいえるパレスチナ情勢に対し、国連WFPはパレスチナ緊急食糧支援を実施している。国連WFPの日本の公式支援窓口である認定NPO法人国連WFP協会の安藤宏基会長に聞いた。(聞き手=日本食糧新聞社・今野正義会長CEO)

飢餓から飢饉、さらなる支援を
 
--パレスチナ緊急支援の具体的な活動について。

安藤 昨年10月7日からの戦闘激化から、半年がたとうとしている。それまでもパレスチナのガザ地区は、食料支援を要する状況だったが、侵攻によって状況が一段と悪化して、110万人が飢餓の中でも最も深刻な5段階目の「壊滅的飢餓」に陥っている。

紛争当初から、国連WFPは3600台のトラックで6万3000tの食料をガザの南部ラファから運び込んで食料支援をしてきた。全く足りない状態で110万人の食料支援を行うためには最低でも毎月2万2000tの食料が必要だが現在それには至っていない。

資金も必要だが、人道支援を行う状況は極めて困難だ。特にガザ地区の北部への支援物資を届ける際には、イスラエル軍の許可が必要であり、あらゆるところで検問・検査をしていて、搬送しづらい状況にある。検問所での厳しい検査と長い待ち時間が課題となり、検問を通過しても、入境した途端に、絶望的な状況に置かれた現地の群衆に取り囲まれたり、運転手が殴打されるなど、運転手に危険が迫る事態も発生した。戦闘激化という危険な状況で国連WFPは一時的に北部の支援を中断したが、現在は再開して危機状態の中でも供給している。

空中投下は最後の手段だ。コストが非常に高い上に、住民に荷物が当たる事故が起きるリスクもある。このような場所での空中投下は有効ではあるが、一度に投下できる量は6t程度に限られることから、国連WFPとしては一貫して陸路で食料搬入を求めている。

ますます飢餓状態の人が増えていて餓死というような状態にも至っている。早く和解、和平交渉していただくというのが一番だと思う。そういう中でも国連WFPは食料を供給している。

--ウクライナ戦争、トルコ・シリア地震、国内では能登半島地震など寄付先が多岐にわたり、どこに寄付すれば良いか迷っている方も多いと思う。パレスチナが支援を必要とする理由は。

安藤 国連WFPの強みは輸送支援にあり、職員たちは戦場から避難してきた人々に温かいパンや缶詰などの食料を継続的に供給している。最近では、戦闘が激化しているが主に陸路でトラックにより小麦粉、食料ボックス、即席食品などを運んでいる。この活動に皆さまからの支援をお願いしたい。

国連WFP協会前会長の丹羽宇一郎氏が中国の大使として就任された後、会長を引き受けて12年目になる。協会活動として年間30億円の寄付金が集まるのが一つの目標だった。ウクライナ緊急支援の時にも大勢の方に寄付をいただいてその規模に至った。寄付していただいた方たちに感謝申し上げる。

パレスチナ問題でも2023年10月から食品企業をはじめとした法人と個人を合わせて約2億8900万円の寄付をいただき、早速国連WFPに送金する手続きを開始した。国連WFPでも資金の不足が問題となっている状況だ。

今回のパレスチナ問題には年内に約1100億円必要だが約400億円しか集まっておらず、約700億円足りない状況だ。政府の拠出金も重要だが、民間からもこのような形で寄付をいただくことは大変重要なことだと思っている。

パレスチナ問題への関心を
パレスチナ・ガザ地区での食料支援 ©WFP/Ali Jadallah
パレスチナ・ガザ地区での食料支援 ©WFP/Ali Jadallah
--パレスチナ支援は、何とかしなければという意識はあるが、食品界の協力は。

安藤 ウクライナ緊急支援募金が単独の支援では最大で食品企業を含めて企業数は200社、個人を含めて約2万件となった。今回のパレスチナ支援では金額の大小ではなく、一社でも多く500社規模の企業に支援していただきたい。金額の件数が多い方がうれしいが、パレスチナ問題に貢献したいという気持ちが大切だ。

この問題はたとえ和平が始まってもこの状態は復興には相当な時間がかかる。少しでも寄付をしてパレスチナの方々の生命に関わっている状況でもあるため、緊急性が非常に高いと考えている。何とか人道的な意味からもうまく解決することを願っている。食品メーカーの方もこういう状態をみて、ちょっとでも役立つことがあればということで寄付をいただければありがたい。日本人にとって寄付行為は、昔から一般的とはいえなかったが、先進国となった日本がその一端を担うという時代になってきた。ぜひとも考慮いただきたい。

食で日本の幸福度もっと上がる 心身・社会的にも充足を
支援された食料を分け合う子どもたち ©WFP/Alli Jadallah
支援された食料を分け合う子どもたち©WFP/Alli Jadallah
--社会貢献は今や常識となっているが、貴協会が行っている活動は。

安藤 世界には学校に通えない子どもが6700万人、5人に1人の子どもが慢性的な栄養不足に苦しんでいる。国連WFPの学校給食支援は、子どもたちに無償で学校給食を提供している。国内には学校給食を支援するキャンペーンとしてレッドカップキャンペーンがあり、現在70社の食品メーカーがこの企画に参加している。レッドカップマーク付きの商品の売上げの一部を途上国の学校給食に充てる寄付キャンペーンだ。

これにより、子どもたちが学校に通えば給食を食べられるため、親は子どもたちを学校に送り出すことに積極的になる。子どもたちは家事や外での労働による食事代を稼ぐ必要がなくなり、学校で学び、これがその国の発展の原動力になってくれるという思いからレッドカップキャンペーン、学校給食支援を地道に進めている。日本国内で70社の企業が、レッドカップキャンペーンのマークを商品に付けていただき、その寄付金を送金して学校給食に役立っている。「学校給食は未来を作る」と言うことで、地道な活動だがこれも行っている。

--社会人、企業としての社会貢献とは。

安藤 国連WFP協会の会長と言うより日清食品ホールディングスの社長として、創業来「食足世平(食足りて世は平らか)」との企業理念で、社会貢献は創業者の安藤百福がチキンラーメンを作ったときからの企業のミッションとなっている。紛争や自然災害問題が食料不足という飢餓状態を招き、建設よりも破壊行動をしてしまいかねない。平和は食が足りて初めて訪れるということから言うと、これらを何とか救っていかなければならないということにもなる。

有事の際には必ず、当社の製品を困っている人に届けるということが、会社の活動の中に組み込まれている。そのような精神の下、世界における紛争が収まってほしいが、次から次へと起きるからそれに対応していかなければならないと思う。企業の使命としても対応している。

--人々は新たな一歩、幸せを待ち望んでいる。食料がなければ生きられないが、大きな訴求ポイントは。

安藤 心身だけでなく、社会的な面も含め満たされた状態である「ウェルビーイング」は主観的だが、幸福度、幸せ度といわれる。日本人のウェルビーイング値が上がらなくてはいけないと思っているが、2024年では143ヵ国で51位。なぜ、幸せ度が低いのかというと、将来に期待が持てないことが大きい。高齢化が進み、今後の生活の心配事が多くなると幸せ度は低くなる。主観的な問題ではあるが、日本人の性格として心配性の方が多いからだろう。給料が高いというのが一番要素があるが、もう少し楽観的に楽しみましょうという余裕も必要ではないか。幸せ度はこれからメジャーになっていく。

食というものはその次に重要な要素になっている。食はそれ自身がおいしいということだけでなく、家族で食べておいしいとか、日本は最も選択肢の多い国だ。食では日本はウェルビーイング値がもっと上がるはずだと思っている。年金・医療問題を含めて将来安定したものに、生活環境をある程度整えなければならないだろう。

それ以外に日本人自身がもう少し将来に期待を持てるように、楽しく生きることが重要だ。そういう時代なので、幸せ感というのは、ただ単に収入だけではなく、食事を含めた生活の問題も、自然で良いという環境も整える必要がある。

 

▶パレスチナへの支援はこちら

皆さまからのご寄付をお待ちしております

国連WFPの活動はすべて、各国政府と民間からの任意の拠出金によって支えられています
寄付はこちらから