ブルキナファソの孤立したコミュニティにとって救世主となりうる国連WFPの食料空輸サービス
ファダ・ングルマの埃まみれの滑走路に着陸した二重反転式ローターヘリコプターは、ここブルキナファソ東部の飢えに苦しむコミュニティの生活を大きく変えました。ヘリから降りたアメリカ人パイロットのクリスティン・ブラウンさんは、カーゴパンツと長袖シャツにジリジリと照りつける朝日を浴びながら、WFP国連世界食糧計画(国連WFP)の食料と栄養支援物資の荷降ろしを監視します。
「食料を必要とする人びとに空輸で食料を届けることは、私がこれまでに行った中で最も充実した使命です。」38歳のブラウンさんは、ブルキナファソで最も隔離された飢餓のホットスポットのいくつかに、人道支援要員とともに国連WFPの食料と支援物資を届けます。この地域は紛争により引き裂かれ、人びとは食料不安とともに暮らしています。「この地域のすべての子どもたちの置かれた境遇を見ると胸が張り裂けそうです。」とブラウンさんは話します。
夜明け前に起床し、日没とともに首都ワガドゥグーの拠点に戻るブラウンさんは、ブルキナファソで国連WFPが管理する国連人道支援航空サービス(UNHAS)で空輸サービスを担当する数十人の請負業者のスタッフのひとりです。
治安の悪化に悩むこの西アフリカの国は広範な人道的ニーズに直面しており、ブラウンさんたちの役割は重要で、道路でアクセスするには危険すぎる場所に到達する上で必要不可欠です。
「このような空輸サービスがなければ、これらのコミュニティの多くは生き延びる道を失っていたでしょう」こう語るのは、エルヴィラ・プルシーニ国連WFPブルキナファソ事務所代表。「私たちが毎月届ける食料は何万人もの人びとにとって文字通り命綱です。私たちの空輸サービスは、最も支援が届きにくい地域の人びとの命を救う食料と栄養支援物資をタイムリーかつ確実に届けます」。
ブラウンさんのようなパイロットは、毎日、アフリカゾウ1頭分に相当する約6トンの食料を、飢餓が最も深刻なブルキナファソ北部と東部に輸送しています。空輸された物資は、国連WFPが全国の食料不安のあるコミュニティに提供する毎月の食料・栄養支援物資の6分の1を占め、2023年には50万人を超えました。
栄養不良
空輸サービスは国連WFPの人道的対応の重要な部分となり、昨年は120万人以上の避難民を支援することができました。その中には、幼児や妊娠中および授乳中の女性、女児が含まれており、これらの人びとは栄養不良の影響を最も受けやすく、一部の地域では緊急事態のレベルを超えています。
気候変動と砂漠化の影響がこの地域での飢餓を激化させました。さらに、武力紛争の激化が深刻な人道的危機を助長しています。政府の推定によると、200万人以上が国内避難民となっており、約270万人が急性食料不安に直面しています。
「国連WFPの支援がなかったら、私たちは食べることができなかったでしょう」と、北部の町ティタオに住む6児の母、ズーラタさんは言います。ティタオは、武装集団に囲まれ、空路でしか行くことができない地域です。「私たちはこの地域を離れることもできないし、土地を所有することもできないので、作物を栽培することもできません。」
ブラウンさんがファダ・ングルマに届けた食料(袋に入った穀物や箱に入った栄養補助食品)は、待機しているコミュニティの近くの流通センターに輸送されます。その頃には、彼女はすでに次の目的地に向かっています。彼女の一日は忙しいのです。
「この仕事は私にとってとてもやりがいのあるものですが、とても難しく、故郷から遠く離れているので、いつも家族が恋しくなります」と、アメリカのアイダホ州に拠点を置いているブラウンさんは言います。「しかし、ここは素晴らしい国で、空からの眺めは非常に美しく、この国で働けることはとても幸運です」とも付け加えます。
アフガニスタン、トルコ、米国などで6,000時間以上の飛行時間を記録しているベテランのヘリコプターパイロットであるブラウンさんは、子供の頃、アフリカ南部での休暇中にこの職業に魅せられました。2012年に飛行訓練生として2人乗りのR22ヘリコプターを操縦したブラウンさんは、コックピットで経験した初めての爽快な感覚を今でも覚えています。
「初めてのフライトは怖かったです」とブラウンさんは振り返ります。「自分が何をしているのかよくわかりませんでした。でも、ひとたび上空に飛び立てば、その感覚は唯一無二です。自分が世界の小さな一部になったような気分になります。飛ぶこと以外に何も考えることができなくなります。」
女性パイロット
昨年初め、彼女はブルキナファソで唯一の女性UNHASパイロットとして、国連WFPの空輸サービスとより広範なUNHASの航空任務のために働き始めました。彼女のような任務に関与する女性の数は増加しています。
「UNHASのために働く女性たちは、才能があり、献身的で、私たちのチームの重要な一員です。彼女らは世界で最も困難な地域の多くで偉大な成果を挙げています。」と、フランクリン・フリンポン国連WFP航空局長は言います。
しかしブラウンさんにとって、パイロットとして成功することは性別とは関係ありません。
「飛ぶことは人間の技術の結晶です。私たちは皆、同じ手と足を持っています。私は仕事に責任を持ち、できる限りのことをしています。皆がチームとして一所懸命に働き、空輸サービスが成り立っているのです」と彼女は言います。
この日、ブラウンさんは東部の4つの町に向かい、ニジェールとの国境まで到達します。このフライトでは、木々や泥レンガの家が立ち並ぶブルキナファソの乾燥した村々の風景の素晴らしい景色を見ることができました。一日の終わりに彼女がワガドゥグーに戻る頃には、太陽が沈み始めています。今回のフライトでも大きな役割を果たすことができました。
「私たちが支援物資積んで到着すると、人びとが集まり、一斉に歓声が上がります。この孤立したコミュニティの人びとがどれほど私たちの到着を待ち望んでいたかがわかります」とブラウンさんは言います。「そのような人びとに食料を届ける仕事に、とても満足しています」
2023年、国連WFPは、ブルキナファソ全土の寸断された町の50万人以上の人びとに約11,500トンの食料と支援物資を空輸サービスにより提供しました。空輸に加えて、国連WFPはUNHASの航空オペレーションも管理しており、昨年だけで27,000人以上の人道支援要員を到達困難な地域に輸送し、同国の人道支援活動の不可欠な部分を形成しています。
ブルキナファソにおけるUNHASの重要な活動は、欧州連合、ルクセンブルグ、スイス、米国からの資金提供で可能となりました。