ウクライナでの戦争:世界的飢餓が懸念される中、国連WFPは黒海の港の開放を要請
WFP国連世界食料計画(国連WFP)は黒海沿岸のウクライナの港の閉鎖が食料供給と世界の何百万人もの人びとの命を脅かしていることから、「政治的な解決」を求めました。
政治的な解決なしには、継続中のウクライナでの戦争によってもたらされた世界的な食料安全保障への脅威は「飢きん、各国の不安定化、そして、必然的な大量の避難民の発生」につながるとデイビッド・ビーズリー事務局長は述べました。
5月19日の国連安全保障理事会での討論で、事務局長は、餓死に近づいている世界の2億7600万人を救うため、ただちに行動を起こすよう世界の指導者に求めました。
「オデーサ地域の港を再開できなければ、それは世界の食料安全保障に対する戦争を宣言することになります」とビーズリー事務局長は述べ、「飢きんと不安定化、世界での大規模な人びとの移動をもたらします」と続けました。
「母親が子どもを凍死させるか、餓死させるかという選択を迫られるというのは間違っています。特に今日、地球上で、430兆ドルという巨額の富があるのですから。」
5月18日に特別に招集され、アントニー・ブリンケン米国務長官やアントニオ・グテーレス国連事務総長が参加したセッション(call to action)でビーズリー事務局長は熱烈に要請をしました。「(穀物の)貯蔵庫は満杯です。どうして満杯なのか、それは、港が機能していないからです。港を開放することは絶対的に不可欠です。ウクライナのためだけではなく、餓死の瀬戸際に立たされている世界の最も貧しい人びとのためにです。」
国連WFPが支援する人びとの数は食料や燃料価格の高騰によって、今年2000万人増加するとみられています。ウクライナでの戦争以降、国連WFPの活動費は月に7000万米ドル上昇し、重要な栄養を届ける支援が削減されています。
ビーズリー事務局長は、昨日国連安保理において(5月19日)、「イエメンではすでに先月、IPC3とIPC4に陥っている800万人に対して配給の削減をしなければなりませんでした」と述べました。(総合的食料安全保障レベル分類でIPC3は「危機的」な飢餓を、IPC4は「緊急事態」の飢餓を指しています。)
「多くの国で、おなかをすかせた子どもから食料を取り上げ、餓死の危険のある子どもたちへ与えるという悲痛な選択を迫られています。」
ビーズリー事務局長は「急増するニーズに対応するため、相当な額の新たな人道支援の資金」を要請しました。「この中には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックで利益を増やした個人の富裕層や企業からの寄付が含まれます」と述べました。
現在世界では、8億1100万人が慢性の飢餓に苦しんでいます。過去最大の2億7600万人は餓死の瀬戸際にあり、この数は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック前の1億3500万人と、2017年の8000万人から急増しています。
「このうち43か国の4900万人は飢きんの瀬戸際にあります」とビーズリー事務局長は言います。
緊急の行動、とりわけ黒海の港の開放をしなければ、より多くの人びとが飢餓に陥り、アフリカ、中東、その他の地域の世界の最も貧しい家族が戦争の影響を受けることになります。
各国は「保護主義を避けて、国境を越えた貿易を続けていくべきです」と事務局長は警告しました。
「私たちはかつてないほどの危機に直面しています。2022年の最悪の状況下で、食料価格が私たちにとって最大の課題です。しかし、2023年までには食料の供給が問題となるでしょう。4億人もの人びとを賄う食料を生産していたウクライナのような国が市場からなくなることは、まさに今私たちが目にしているような市場の不安定化につながります。」
ウクライナでの戦争が始まる前から、国連WFPは2022が「かつてないほどの飢餓」の年になると予測していました。紛争、気候変動、新型コロナウイルス、価格の高騰といった壊滅的な要因が重なり、すでに打撃を受けている経済に追い打ちをかけているからです。
ウクライナでは「農場を再び機能させること、トラックや電車、船を再び動かすこと」が重要であるとビーズリー事務局長は述べ、世界の指導者に命を救うための行動をただちに取るように要請しました。「市場を安定化させるためにできる限りのことすべてを行う必要があります。そうでなければ事態はより悪化してしまいます。でも希望も持っています。」
「私たちはこれまで飢きんを回避することができました。過去何年もにわたって不安定化を防ぐことができました。それはこの部屋にいるあなたたちが立ち上がり、我々も支援を行ってきたからです。再びできると信じています。」
「地球にとって今は危険な時期です。世界は火の中にあります。でも解決策があります。行動しなければなりません、今すぐに。」