戦闘続くイラク北部 ~食糧支援の現場から~
イラク北部での武力衝突によって、6月中旬、北西部のモースル周辺地域から大勢の人々が避難して以降、彼らを取り巻く状況は悪化の一途をたどっています。戦闘と政情不安により、これまでに120万人が家を追われました。クルド人自治区では、すでに数十万人が避難生活を送っていますが、さらに多くの人たちが同地へと車で移動しています。
また、多くの少数民族が武装勢力の攻撃を受けています。中でもヤジディ教徒たちは、食糧も水もないシンジャルの山岳地帯に逃げ込み、9日間にわたって厳しい避難生活を送りました。大勢の人が山を脱出した一方で、命を落とした人も多いと見られています。
私の同僚たちは、ドホーク県で避難民の支援にあたっています。国連WFPは、地元の非政府組織(NGO)と共に、緊急の炊事場を設け、毎日温かい食事を10万人に提供しています。この炊き出しは、キリスト教やイスラム教などの宗教に関係なく、支援を必要としているすべての人に提供されています。食糧はもちろん、調理器具も何も持たず、身一つで避難してきた人々はここで、久しぶりの温かい食事を口にすることができます。
ドホーク県南部の町、シャリアには、避難民が多く集まっています。シンジャルの山岳地帯で戦闘が始まった数日後、私はシャリアを訪れましたが、街は戦闘に抗議する人々であふれかえっていました。
シャリアでは、28歳の大工兼鍛冶職人、サミに出会いました。彼は、シンジャルに母親や兄妹ら家族を残し、この地に逃れてきました。家族たちが今どうなっているか分からないと話した彼の顔には、怒りと失望の色が見ました。
この戦闘は、教育にも影響を及ぼしています。イラクで教える教師たちの多くが、避難を余儀なくされました。また、学校も避難所や宿泊の場へと変わり、子供たちが戻れないため夏休みが延長されている状況です。薬学生のアイユーブは、大学へ戻って学位を習得するため、平和を強く望んでいると話しました。
国連WFPは、子どもたちの支援に特に力を入れています。ドホーク県では、6ヶ月から36ヶ月の乳幼児を対象に、「A29エナジーバー」と呼ばれる、栄養たっぷりの食品を提供しています。これを受け取った母親たちは、子どもたちへの支援に感謝していました。先の見えない状況が続く中、今後も支援の必要性がますます高まりそうです。