降雨不足によりソマリアで迫る壊滅的な飢餓
モガディシュ―雨の少ない雨季が4回続くという歴史的な事態、急激に高騰する物価、そして人道支援のための資金不足により、ソマリアでは壊滅的なレベルの食料不安、餓死、病に直面する人びとの数が160%増加しました。終わりの見えない悲惨な干ばつがこの国に影響を及ぼしており、飢きんの恐れが、かつてないほど高まっています。国際社会からの緊急の支援増強が、飢きんを回避するためには欠かせません。
複数の国連機関が早急に実施したアセスメントに基づいて、飢餓早期警報システム・ネットワークと、国際連合食糧農業機関(FAO)の食料安全保障・栄養分析ユニット(FSNAU)がまとめた新たな報告によると、2022年9月までの期間に、710万のソマリア人(人口の約50%)が危機的レベルの食料不安、あるいはそれよりも深刻な状況に直面するとみられています。そのうち21万3000人が壊滅的な飢餓や餓死に直面し、これは4月に予測されていた8万1000人と比べて、劇的に増加しています。特にソマリア南部など、飢きんの危険にさらされる地域が増えています。南部では、不安定な情勢と紛争によって、人道的支援を届けることが困難になっています。
こうした統計は、今後数か月の間に急速な悪化が見込まれる食料安全保障の状況を反映しています。今年後半に訪れる雨季もまた、平均降雨量を下回る可能性があると、気象予報機関が警鐘を鳴らしており、国連機関とパートナー団体は現在、この国の最も脆弱な立場にある人びとを守るため、限られた資源を飢きんを防ぐために集中させています。
「私たちは起こりうる惨事を見据えています。今行動しなければ、ソマリアの多くの家族にとって悲惨な事態になるでしょう」と、アダム・アブデルムーラ国連事務総長特別副代表、常駐・人道調整官は述べています。「ソマリアは危険な状況にあります。降雨の少ない雨季が、過去に例のない連続5回目になろうとしているのです。何十万もの人びとが飢きんの危機にさらされるということです。2010年から2011年の飢きんでは、26万のソマリア人の命が犠牲になりました。2022年に同じことが再び起こることがあってはなりません。この危機を避けるために、まさに今、より多くの手を打つことが急務です。」
2022年1月から4月の間には、 複数の人道支援機関が合わせて280万の人びとを対象に、干ばつ下の援助や飢きん防止のためのプログラムを通して、命と暮らしを守る支援を行いました。しかし現在行われている支援の規模と国際社会からの資金では、最も危険にさらされている人びとを守るにはまだ十分でないことを、新たなアセスメントは明らかにしています。
最も弱い立場の人びとへの食料価格の影響
ソマリアの家庭は、高騰する食料価格に対応することがますます難しくなってきています。国内で不作や凶作の時期が続いたことや、家畜の死亡によって、地域の食料は乏しくなっており、輸入される食料の価格も記録的なレベルに達しています。ウクライナでの紛争による、サプライチェーンへの影響もその原因の一端です。地域によっては、食料価格が140%から160%上昇しており、貧しい家庭はお腹を空かせ、困窮しています。
「人道的な惨事を防ぐために、ただちに行動しなければなりません。栄養不良や飢えによって、最も弱い立場にある人びとの命はすでに危機にさらされています。飢きんの宣言を待つわけにはいきません」と、国連WFPソマリア事務所のエルキディール・ダロウム代表は述べています。「飢きんを防ぐのは時間との闘いであり、国連WFPは可能な限り支援規模を拡大しています。限られた資金を、最も危険にさらされている人びとを守ることに優先的に回しています。しかしながら、新たな統計が示すように、拡大する飢餓の危機に対応するためには、さらなる資金が今すぐ必要なのです。」
2021年半ばからの干ばつによって約300万頭の家畜が死に絶え、肉と乳製品の減少が栄養不良をさらに悪化させました。それは特に、地域産の食料に頼っている牧畜地帯の幼い子どもたちの間で顕著となっています。2022年5月の時点で、推計150万人の5才未満の子どもが、年末にかけて急性栄養不良にさらされると予測されています。そのうち38万6400人は深刻な栄養不良になる可能性があり、これは前回の推計から5万5000人増加しています。
降雨不足の地域での栄養状態が悪化するにつれて、栄養不良の危機はさらに深刻化するでしょう。子どもたちや脆弱な立場にある人びとが最も打撃を受けます。「これは子どもの危機です。水あるいは栄養だけの話ではなく、子どもたちが教育を受けられず、保護を必要とするような状態にさらされ、健康状態が悪化するということです。こうしたこと全てが子どもたちの将来に影響を与えます」と、国連児童基金(UNICEF)ソマリア事務所のアンジェラ・カーニー代表は述べています。2022年1月から4月の間に、UNICEFは11万4000人を超える重度の急性栄養不良の子どもたちの治療を支援しました。「現在子どもたちを治療していますが、飢きんを防ぎ、ソマリアの子どもたち1人1人の将来を守るためには、今、さらなる資金が必要です。」
人道支援の資金不足で深刻な状況に
国際社会からの人道支援資金はこれまでのところ、ソマリアで飢きんを回避するために必要な額に近づかず、食料安全保障における深刻な事態が進んでいます。2022年人道支援計画は、18%しか資金が確保できていません。「必要とされている支援は、まだ全ては実現されておらず、何十万ものソマリアの人びとが、まさに現実の飢餓と死の危険にさらされています」とFAOソマリア事務所エティエンヌ・ピーターシュミット代表は言います。
「とりわけ地方のコミュニティの苦悩の大きさを知るのは非常につらいことですが、この甚大な苦しみを防ぐために私たちができることには限りがあります。ソマリアにおける暮らしの崩壊、農村部から国内避難民(IDP)キャンプへの大規模な避難、そして広範囲にわたる飢きんを防げるという希望がまだある間に、国際社会に迅速な行動を求めています。」