写真で見る国連WFP 2020:紛争、気候変動、新型コロナウイルス、ノーベル平和賞
1月
国連WFPは、2010年のハイチ地震から10年を迎えました。その年の1月12日午後4時53分に発生したマグニチュード7.0の地震では、最大で30万人もの人々が亡くなりました。たった30秒間で、世界はひっくり返ったのです。100万人以上もの人々が避難をし、何万人もの人々が飢餓の危険にさらされました。
国連WFPは現在、国内1,100万人のうち最も脆弱な90万人に支援を行うため、緊急支援を拡大しています。そのうち400万人が緊急食料支援を必要としています。国連WFPは2021年までハイチへの支援を維持するために440万米ドルの支援を呼びかけています。
2月
都市ほどの大きさにもなるサバクトビバッタの群れが、東アフリカ全体の作物を破壊。南スーダンは、2003年~05年に西アフリカで発生して以来の規模の、バッタの侵略を経験している国の一つです。
南スーダンはサバクトビバッタによる侵略に加え、集中豪雨、大規模な洪水、紛争によって飢餓と食料不安の悪化に直面しています。国連WFPは現在、遠隔地や安全ではない、アクセスが困難な場所に食料を届けています。6月以降、洪水の被害を受けた地域の約97万3千人に食料を支援してきました。2021年には4億7500米ドルを必要としています。
3月
新型コロナウイルスの感染拡大によって民間航空会社による運航が停止する中、人道および公衆衛生への対応の継続性の確保するために、世界保健機関(WHO)とも緊密に連携し、国連WFPはその空白を埋めています。
国連WFPの輸送・通信支援では「グローバル人道支援拠点」を設置し、赤十字国際委員会など約200の援助機関の職員を、個人用保護具やその他の医療品とともに、脆弱な地域に搬送しています。
4月
新型コロナウイルスの蔓延を防ぐために授業が中断され、197か国で約16憶人もの子どもたちが学校に行けなくなりました。3億7000万人の子どもたちが、多くの場合に唯一頼りとなる食事の学校給食を受け取れなくなっています。
学校が閉鎖され始めると、国連WFPは学校に通う子どもたちが食事を受け取れ続けられるよう動き出しました。国連WFPは、学校給食や健康に関する取り組みを支援してきた60年の実績があり、子どもたちの学習能力を高め、教育の機会を広げています。
また国連WFPはUNICEFとのパートナーシップを開始。最も脆弱な子どもたちがこの緊急事態に終わった後に学校に戻ってくるための動機づけとして、学校を拠点に「学校給食」及び「水と衛生」を提供する取り組みを支援しています。そして学校給食の代わりとして、国連WFPは各国政府とともに、68か国の子どもたちに持ち帰り用食料、また食料の引換券や現金の提供を行っています。
学校給食は女の子たちにとって特に重要です。多くの貧しい国々では、学校での食事が保証されることは、生活に苦労している親たちが娘を学校へ行かせる動機づけとなり、女の子たちが重い家事労働や早すぎる結婚から逃れることにつながります。
5月
世界最大の水上スラム街である、ナイジェリア最大の都市ラゴスにあるマココは、「アフリカのヴェネツィア」とも呼ばれています。ここではナイジェリア政府が国連WFPからの技術支援を受けながら、脆弱な都市部に手を差しのべています。
ナイジェリアの人口はアフリカ大陸最大の1億8200万人、アフリカ最大の経済を誇ります。ナイジェリアの北東部では、紛争の激化や人々の避難、生活の混乱が相まって、何百万人もの人々が破滅的な飢餓に見舞われる可能性があります。ボルノ、アダマワ、ヨベの各州の危機の影響を最も受けている地域に、持続的な人道支援がなされなければ、6月から8月のリーンシーズンに510万人が食料を得ることができなくなります。
6月
世界の先住民族は、新型コロナウイルスとそれに伴う制限のために、かつてないほどの健康面と経済的な課題に直面しています。先住民族ではない人々と比べて3倍近くの人が極度の貧困の中で生活している可能性があり、世界人口の6%を占める4億7600万人の先住民族は、社会経済的な疎外、差別、政治的排除を歴史的に経験してきました。
多くの国で先住民族の人々は、パンデミックに対応するために祖先から受け継いだ伝統に目を向けています。これには、ある種の野菜が手に入らなくなったときの古い食習慣を復活させたり、植物や果物を使った手指消毒器を作ったり、症状を緩和したりするために先住民族ならではの知識を活用することが含まれています。
地域の資源で生きていけるコミュニティもあれば、そう簡単にはいかないコミュニティもあり、国連WFPは最も弱い立場にある人々には配給食料を提供しています。国連WFPは小規模農家には種子を寄付し、学生には持ち帰り用の食料を提供し、保健センターや個人への配給を手掛けている地域のリーダーには、マスクや手袋、消毒剤を届けています。
7月
すでに世界最大の人道的危機に見舞われ、医療システムが壊滅的だったイエメンでは、新型コロナウイルスによって事態は一層深刻なものとなっています。
特に紛争が激化しているいくつかの地域では、引き続きアクセスが国連WFPにとって深刻な課題となっています。治安の問題がありつつも、それでも国連WFPとパートナー団体は、国内の約1,300万人の人々に支援を続けています。
8月
8月4日に発生したベイルート港の爆発で200人以上が死亡、6000人以上が負傷しました。
港の損失は、すでに近年最悪の経済危機に悩まされている国の食料安全保障に影を落としています。レバノンの需要の85%を依存する食料輸入のほとんどがベイルート港を経由しているだけでなく、爆発は12万トンの穀物在庫を破壊しました。
レバノンでは爆発前から、100万人が貧困ライン以下の生活をしており、人口の45%が貧困に陥っていることから、食料安全保障は深刻な懸念材料となっていました。国連WFPは24時間体制で、米、パスタ、ブルグル、ひよこ豆、油、塩、砂糖が入った食料のセットを届けることで、爆発の影響を直接受けた人々を緊急支援しました。
9月
パキスタンはいまや食料余剰国であり小麦の主要生産国の1つにもなり、それを社会的な弱者に提供していますが、平均的な世帯では月収の半分を食費に使わなければなりません。このため、食料価格の高騰をもたらすショックに対して、家族は特に脆弱な立場に置かれています。世界の多くの地域と同様に、気候変動は事態を悪化させています。
今年、パキスタン全土で大型のモンスーンによる大規模な洪水が発生し、何万人もの人々が避難を強いられ、100万エーカー近くの農作物が全滅しました。国連WFPは現金支援と食料支援を実施し、干ばつや洪水の影響を受けた地域や、避難民が戻ってきた地域で、灌漑システムなど長期的な解決策を推し進める活動しています。
国連WFPにとって、災害を予防し、緩和し、そして備えることは、人々を飢餓から救い、人々の未来を救うという使命において欠くことのできない一部となっています。
10月
10年近くに及ぶ紛争の後、シリア全土の家族が貧困と食料不安の増大に直面しています。基本的な食料品の価格が2019年だけでなんと247%も上昇したことで、930万人もの人々が食料不安に陥っており、深刻な人道支援のニーズが全国で続いています。
国連WFPの学校給食プログラムは、アレッポで脆弱な女性たちを雇用し、職業訓練と収入を提供することで、彼女たちが家族を支え、経済的に自立できるようにしています。
11月
エチオピア北部のティグライ地方で、紛争により10万人が家を追われたことで、エチオピアとスーダンの国境では人道危機が起きようとしています。暴力は大規模な移動の波を引き起こし、数千人が飢餓の危険にさらされています。状況の悪化を防ぐためには平和が極めて重要です。
国連WFPはスーダンで、難民キャンプの6万人に高エネルギーのビスケットや温かい食事、毎月の食料を提供しており、追加の資金が緊急に必要とされています。
12月
国連WFPは10月、紛争と飢餓との関連性や、食料支援が平和と安定への第一歩になるという重要な役割が認められ、2020年のノーベル平和賞を受賞し、12月10日にローマで行われた式典でメダルを授与されました。
ビーズリー事務局長は国連WFPと2万人の職員を代表し、多くの視聴者が見守るなかバーチャルな式典でノーベル平和賞を受賞しました。ビーズリー事務局長は、「今回のノーベル平和賞は、感謝以上のものです。」と述べ、「これは行動への呼びかけです。多くの戦争、気候変動、政治的軍事的な武器として飢餓が使われることの蔓延、そして世界的なパンデミックにより、2億7千万人の人々が飢餓へと向かっています。」と続けた。
2020年を終えて未来を見据えたとき、私たちは私たちの同僚、パートナーの組織、そして支援を受ける人々からの刺激を受け続けており、飢餓ゼロという目標を達成するために一丸となって取り組む決意を固めています。