ウクライナ戦争:食料とエネルギー価格の高騰が飢餓を助長し、より多くの国に影響が及ぶと国連WFPは警告
WFP国連世界食糧計画(国連WFP)は、ウクライナ紛争に端を発した食料・エネルギー価格の高騰が世界中の飢餓に与える影響を最小限に抑えるため、ウクライナ国内での活動を拡大し、310万人に支援をする予定です。 「飢餓がウクライナを直接脅かしているように、この戦争の影響は世界中に広がるでしょう。ロシアとウクライナは合わせて世界の小麦の約30%を輸出しています」と国連WFPのデイビッド・ビーズリー事務局長は述べました。
国連WFPが発表した報告書は、ウクライナでの戦争の影響により国連WFPの世界的な活動運営にかかる費用は毎月2900万ドル増加すると警告しています。既存の4200万米ドル(2019年以降)の増加分と合わせると、国連WFPが直面する追加のコストは毎月7100万米ドルにのぼります。
国連WFPはすでに、2022年は壊滅的な飢餓の年になり、38カ国で4400万人が飢きんの瀬戸際に立たされると警告していました。追加的な影響は数百万人にとって惨事をもたらすものとなります。
ウクライナは世界の小麦の大部分を輸出しているだけでなく、過去10年間で、ひまわり油などの食料を国連WFPに提供する最大の供給国となっています。
ロシアはエネルギー分野で非常に大きな役割を担っているため、その石油やガスに対する制裁によって避けられない価格の上昇は、世界で最も弱い立場にある人びとの食料へのアクセスを制限することになます。また、そうした人の多くはすでに超高インフレに直面していると報告書は述べています。
こうした懸念に加えて、「戦争リスク」の保険料が一部の航海で300,000米ドルに達するなど、船舶のコストが増大しています。
「戦争が激化すれば、遠く離れた何十もの国々が影響を受けることになります」とビーズリー事務局長は述べました。
「ドナー国の財政が逼迫しているため、国連WFPの資金は横ばいになっており、東アフリカや中東の難民など脆弱な立場の人びとへの配給を減らさざるを得ませんでした」とも述べています。「配給量が半分になるということは、飢えた子どもたちが毎日1皿分のシリアルしか食べられないということです。」
国連WFPが配給量を削減しなければならなかった国には、世界最悪の飢餓危機の一つであるイエメンが含まれています。イエメンでは1620万人が食料不安に陥り、飢きんのような状況が点在しています。
ウクライナの港が閉鎖され、ロシアの穀物取引が制裁のために一時停止しているため、現在ロシアとウクライナで1350万トンの小麦と1600万トンのトウモロコシが凍結されていると国連WFPの報告書は述べています。
何百万人もの人が小麦の輸入に頼っているアフガニスタン、エチオピア、シリアでは、輸入が停止された場合、特に被害を受けやすくなっています。国連WFPが緊急支援を展開しているこれらの国々は、すでに紛争、気候変動、新型コロナウイルスのパンデミック、価格上昇の複合的な影響にあえいでいます。
中東・北アフリカ地域では、食料とエネルギー価格の上昇がレバノンとイエメンに悲惨な状況をもたらします。小麦需要の84%を輸入で賄っている東アフリカでは状況の悪化が予想されます。
報告書は、「オデッサ港からの国連WFP輸送のキャンセルまたは遅延」について警告しており、それは「主に西アフリカに影響を与える」とみられています。こうした貨物は5月以降の食料配布に必要となります。
不足、戦争、新型コロナウイルスの感染拡大による経済的余波、13年ぶりの高値に近い原油価格のため、2019年に比べて国連WFPの食料にかかるコストはすでに30%増加しています」とビーズリーは言います。「この急拡大する戦争によって黒海の輸送回廊がさらに混乱すれば、輸送価格は連動して2倍、3倍に跳ね上がるでしょう。」
さらに、「非常に近いうちに、生き残ったウクライナの農家は、これまで国連WFPが小麦の半分以上を調達していた、世界で最も豊かな大地の春の畑に種を蒔こうとしています。」しかし、それも戦争で妨げられる可能性があります。
もしウクライナの畑が今年休耕状態になれば、私たちのような支援機関は、世界最高の小麦の損失を補うために新しい市場から調達することを余儀なくされるでしょう。そのためには、膨大な費用がかかります。」
今週、ビーズリー事務局長はポーランドの国境沿いの町を訪れました。そこでは国連WFPのスタッフが、ウクライナ国内で途絶えた商業サプライチェーンを支援し、300万人以上に支援を届けるために活動を拡大しています。 国連WFPは地元NGOのタリルカ (Tarilka)と協力し、すでにハルキウ(ハリコフ)で1日3万個のパンを10日間配布し、6万人が対象となりました。国連WFPは急速に規模を拡大しようとしているところです。また、委託を受け、小麦粉を鉄道でキーウ(キエフ)に輸送しています。
「国外に避難できた人びとは人道支援団体や政府によって食料支援を受けることができますが、ウクライナ国内では取り残された何千万もの人びとに食料を提供するためのシステムが崩壊しています。トラックや列車は破壊され、空港は爆撃され、橋は崩落し、スーパーは空になり、倉庫は物資がなくなっています」とビーズリー事務局長は述べています。
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