サバクトビバッタの襲来は一刻を争う問題

「ついに和平の可能性が見えたと思ったら、今度はトビバッタの襲来ですよ。2020年は苦しい年になりますね。」と国連WFP南スーダン事務所代表のマシュー・ホリングワースは言います。
広範囲に及ぶサバクトビバッタの襲来は、この国の作物栽培や食料供給、生活に影響を及ぼしています。
「この国の人口の55%は食料不足に陥っています。これほど多くの人口が食料危機に瀕している国は他にありません。」とホリングワースは続けます。
これらの大群はアラビア半島付近で発生し、昨年の6月に「アフリカの角」に到達しました。その前年の10月から3カ月間続いた雨季により湿度が上昇し、トビバッタの繁殖を促しました。

昨年の12月上旬に東アフリカを襲ったサイクロン「パワーン」により洪水が発生したことも更なる繁殖増加に繋がりました。
トビバッタは、ケニア、エチオピア、ソマリアの一部地域にも被害を拡大し、5,6月に収穫予定だった穀物や小規模農家の農作物にも影響が出ています。
トビバッタは3–5カ月の寿命に加え、1日あたり自らの体重分の作物を餌とするため、何百万ヘクタールもの農場を食いつくし、人々の暮らしに大きな打撃を与えます。

1平方キロメートルあたり8千万もの成虫が、1日で128キロメートルも移動することもあり、人間35,000人分に相当する量の作物を消費します。
サバクトビバッタは世界の20%もの土地に飛来し、65%の開発途上国に被害を出すと国際連合食糧農業機関(FAO)は予測しています。WFPもイランやサウジアラビア、イエメンやインドにまで広がっているバッタ被害を食い止めようとFAOと協力しています。
南スーダンのマグゥイはトビバッタ被害により影響を受けた地域の一つです。農家の人々は音や火を使い撃退する事が出来ましたが、長期に渡る襲来を恐れています。
「子ども達を家の外に出さない様にする家族もいます。」
襲来の第一波は、産卵場所を求めて南スーダンとウガンダ国境付近に到達し、それ以来多くの卵が孵化しています。2週間ほどで孵化し、1カ月程で成虫になります。
「バッタの雑食性を恐れ、子ども達を家の中に留める家庭も多くあります。」と、マグゥイ農業組合代表のジョセフ・オケウラさんは言います。

「バッタを追い払おうとした」と、農家のトーマス・オドングさんは言います。「あいつらは逃げようとせず、家の裏や栽培してるマンゴーを囲んでました。ポーポーやマンゴー、アボカドを栽培していますが、これらを喰い散らされると、生きる術がありません。」
オケウラさんも言います、「今年は特に心配しています。もし政府やNGOが対策を講じてくれないと、食料不足に陥ります。」

サバクトビバッタは、最も破壊的な移動性害虫の1つとされています。今回の大量発生は、エチオピアとソマリアで25年間、ケニアでは70年間で最悪の蝗害となってます。
人口の半数以上の600万人が食料不足の南スーダンでは、このバッタ被害により農作物の栽培に影響を及ぼし、更なる食料危機の可能性があります。

3月から4月に雨季が始まり、放牧地や農地の草が復活する時期に重なるため、新しい世代のバッタの繁殖が広がる可能性があります。主要な収穫期、そして二次収穫期への影響が不安視されてます。
餌や牧草地の不足、収入の減少、食料価格の高騰により、農家や牧畜家たちは食料不足になるでしょう。
今後の被害拡大を食い止めるため、WFPとFAOは即座の追加資金援助を求めています。

今年2月、FAOは1億2800万ドルの駆除費用を募りましたが、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からの1000万ドル、欧州連合(EU)からの1100万ドルなど、3300万ドルの援助のみ留まっているのが現状です。
2003年から2005年の西アフリカで被害をもたらした大規模蝗害以来の今回の大量発生は、多くの地域での人道支援に追い打ちをかけてます。洪水や干ばつなどの自然災害だけでなく、ソマリア内戦やエチオピアの民族衝突などの紛争により、すでに多くの人々が危機的状況に瀕しています。
昨月、FAOのシシル・フェランド氏はニューヨークタイムズのインタビューで、「この問題は想像以上の規模です。トビバッタ群は"動く"標的であり、我々にとって時間との戦いです。」と答えました。