【日本人職員に聞く】人々の気持ちに寄り添うことの大切さ
人間対人間の関係を大事に―ルワンダ・下村理恵さん
アフリカ内陸部の小さな国、ルワンダでは、25年前の1994年に80万人以上が犠牲となる大虐殺が発生しました。その後四半世紀を経て、同国は「アフリカの奇跡」と言われるほどの発展を遂げ、IT立国としても注目されています。そんなルワンダで活動する日本人職員の下村理恵さんに話を聞きました。
多国籍の環境で支援を束ねる
ルワンダは発展してきてはいますが、首都のキガリ市内だけという印象で、地方はまだ相当貧しいです。何日も同じ洋服を着ている方がいたり、靴を履いていない子どもがいたりします。5歳未満の子どもの35%は発育阻害に陥っています。隣国から逃れてくる難民もいます。
私は2018年1月からルワンダ事務所にてプログラムユニットリーダーとして勤務しています。難民支援や社会保障など、支援内容ごとにチームが6つあり、そのマネジメントが任務です。色々な国の人たちとの仕事なので、やり方や考え方が違うことがほとんどで口論になることも多いですが、目的は皆「飢餓をゼロに」と同じです。粘り強く話し合って、スムーズに業務が進むようにしています。
仕事の醍醐味~人々の苦しみとの狭間で
2004年のスマトラ島沖地震の際に緊急支援に携わったのですが、徹夜続きのなか何とか被災者の方々に食料を届けることができました。皆さんがとても喜ぶ顔を見た時は、困難の中チームで目的を達成することができ非常に嬉しかったです。このような経験が国連WFPでの仕事の醍醐味です。
一方で、同スマトラ島では、私が現地を離任した直後に再び大きな洪水が発生してしまいました。なぜ被災者の人たちがこんなに苦しまなければいけないのか…、と非常にやるせない思いでした。私たちも支援活動で苦労はしましたが、被災者の方たちと比べればほんの一時です。しかし彼らは違います。過酷な状況の終わりが見えません。したがって、私たちはなるべくそういった人たちの立場になって考えなくてはいけないと思います。結局、私たちは全てが揃っているのです。できることはやらなければならないと考えています。
しかし同時に、実際の支援の際は、きちんと相互の信頼関係を築いてからでなくてはいけません。何でも持っている私たちのような人が支援を持ってきても、すぐにいなくなるだけと思われてしまうこともあります。これからも、人間対人間の関係であるということを大切にしていきたいです。
現地に足を運び人々に会うことが原動力
普段はキガリの事務所にいることが多くなってしまいますが、1カ月に1~2回は地方の現場に赴き、人々から話を聞くようにしています。実際に現地を見て、話をすると、自身の生活がどれだけ恵まれているのかと感じ、自分の問題など小さいものでクヨクヨなんてしていられないと気付かされます。
私たちはたまたま日本に生まれ、何不自由ない日々が送れます。しかし、いつ何時、災害に見舞われ支援が必要になるか、いつ逆の立場になるか分からない、それをいつも頭に留めておかねばいけないと思います。
母親としても子どもたちの成長は大きな喜び
私には6歳と9歳の2人の子どもがいるのですが、この子たちを見ていても、何と幸せなことかと思います。一日三食食べることができ、お菓子もあります。普通に何でもない暮らしが送れます。しかしWFPの給食支援を受けている子どもたちは、それに大きく頼っています。そんな子どもたちが、明るい笑顔で将来の夢を話してくれたり、数年後に大学まで行ったという話を聞いたりすると、やってよかったと思います。成果がすぐに出るわけではありませんが、何とかして支援を続けていきたいと思います。
現地での日本のイメージは良く、私が日本人ということを言うとパッと明るい表情をしてくれます。皆さんもどうか世界の飢餓についてまずは考えていただき、できることからやっていただければと思います。
下村 理恵(しもむら まさえ)
国連WFP ルワンダ事務所 プログラムユニットリーダー
上智大学比較文化学科、国際大学大学院国際関係学科卒業後、チェコにて専門調査員、UNHCRハンガリー事務所にてJPOとして勤務。2005年に国連WFPインドネシア事務所にてインドシナ地震支援調整を担当後、ジンバブエ、スーダン、東ティモール、ミャンマー事務所にてプログラム全般に携わる。