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【日本人職員に聞く】紛争6年目のイエメン、全てを失った人びとに食を届ける

, WFP日本_レポート

現地の人びとの自立を後押しする支援を目指して ―舛岡真理さん

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2019年秋、一時帰国時の舛岡さん。©JAWFP

Q. イエメンの状況や人々が置かれている様子を教えてください。

A. 日本ではあまり報道されていないですが、依然として内戦状態にあるイエメンでは、その状況の深刻さから国連WFP史上最大のオペレーションを行っています。人口およそ3,000万人のうち、約2,000万人が支援を必要としている状況にあり、そのうち国連WFPが食料などを届けることができているのは約1,200万人です。これはほぼ東京都の人口と同じです。 内戦開始以降、空爆や各地で繰り返される衝突により、被害の爪痕は街中の至るところで目にします。アクセスや貧困などの問題が悪化した結果、食料が手に入りにくく、多くの人々や子ども達が苦しむ状況に陥っています。

Q. 舛岡さんの仕事内容、課題、その解決策を教えてください。

A. 私はイエメンの首都、サナ国事務所でサプライチェーン担当官として、主にバウチャー(食料引換券)による支援のプログラムを担当しています。支援を受ける方々にバウチャーを配り、それと引き換えに基本的な食料(小麦、豆、油、砂糖、塩など)を配るというものです。

このプログラムの特徴は国連WFPではなく現地のサプライヤーに食料の調達や運搬を委託しているということです。これにより、より幅広いサプライチェーンのネットワークを駆使することができ、地元経済の活性化にも繋がり、また行きにくいエリアにも効率的に食料を届けることが可能になります。 約1,200万人の支援を受けている方々のうち、約300万人がこの方法で食料を受け取っています。仕事内容は現地サプライヤーとの契約、交渉、食料が滞りなく運ばれているか、配られているかのモニタリング、品質管理、市場調査、マーケット分析など多岐に渡ります。

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配給食料とサプライヤーの男性。(c)WFP

課題としては、イエメン独特の商習慣や言語の壁に加えて、大きく変動する食料マーケットに如何に対応していくかが挙げられます。また現地のサプライヤーにとってもここまでの規模の仕事はあまりないため、国連WFPの要求する基準を満たしながら業務を遂行するのは簡単ではありません。加えて、国連WFPの目の届きにくい地域で如何に品質管理を行っていくかも大きな課題です。 打開策は、少しずつでも改善策を模索・実施し、それが反映されているかどうかフォローアップしていくこと、新しいアイデアがあれば積極的に試してみること、国連WFP及び第三者によるモニタリングを強化していくこと、そしてオペレーションやマーケットの分析を常に行い、ギャップを埋めていく努力を重ねること等だと考えています。

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サプライヤーとのミーティング。©WFP

Q. 日本の人々へのメッセージをお願いします。

A. まずはイエメンの実情を知って頂けると有り難いです。厳しい状況であっても、日本ではあまりニュースにならないのが残念です。 イエメンは豊かな自然、世界遺産などに恵まれた非常に美しい国ですが、現在もこのような状態が続いていることに胸が痛みます。イエメンの方々が自立した生活を取り戻し、平和と美しい国が戻るよう願うばかりです。また、いつか平和が訪れたときに国を担う世代の子どもたちが、深刻な栄養不良による障害を将来持つことのないよう、いま支援を届けることが必要です。これまでの皆様のご支援に心から感謝すると共に、イエメンの人々の自立に向けた継続的なご支援を宜しくお願い申し上げます。

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子どもたちと舛岡さん。©WFP

舛岡 真理(ますおか・まり) 国連WFP イエメン事務所 サプライチェーン担当官

学生時代より食料援助分野に関わることを目指し、国連WFPを志す。ロジスティクス関連での職務経験、大学院進学を経て、2014年WFPミャンマー事務所へ派遣。国内避難民キャンプへの食料支援等に携わる。WFPローマ本部(シッピング・オフィサー)を経て、2018年よりWFPナイジェリア事務所・ラゴス支部所長。緊急支援の上流オペレーションを担当。2019年5月よりWFPイエメン事務所就任。慶応義塾大学総合政策学部卒。London School of Economics and Political Science社会政策修士。

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