「確かに届ける」ためにできること~東アフリカからイノベーションを起こす!~
国連WFPローマ本部で勤務する日本人職員・金田尚子からのレポートです。
自然災害が起きた現場や紛争により食料が手に入らなくった地域など、国連WFPが食料支援を届ける場所は必ずしも平たんな道が続く場所ではありません。しかし食料を必要する人々がそこにはいます。国連WFPは人道支援における「物流のリーダー」として、様々な技術を駆使して人々へ食料や支援物資を届けています。 そんな国連WFPの物流部門で国連ボランティアそしてコンサルタントとして働き、今月からJPOとしてローマ本部で勤務する金田尚子(かねだ たかこ)に話を聞きました。
2017年4月、グローバル平和構築人材育成事業の一環で国連ボランティアとして東アフリカ地域事務所(ケニア・ナイロビ)に派遣されました 。私が派遣された当時、東アフリカ地域事務所では、ジブチ、エチオピア、ケニア、南スーダン、ルワンダ、ブルンジ、ソマリア、ウガンダの計8か国を管理していました。東アフリカ地域は当時2,300万人もの人々が緊急的に食料支援を必要としており、その食料の多くは紛争の起きている南スーダンへ運ばれていました。
東アフリカ地域は季節的もしくは慢性的な問題を抱えている地域もある一方で、ナイロビのようなスタートアップ企業が集まる都市もある興味深いところです。私はそこで物流担当官として働いていたのですが、主に情報管理やプロジェクト管理を任されていました。具体的には、地域事務所に各地から集まってくる情報を分かりやすくまとめ、マネージメントの意思決定や内部への情報共有、ドナーへの報告書に仕立てます。
東アフリカ地域事務所のユニークなところの一つは「東アフリカからイノベーションを!」と熱い思いを持った上司が多くいることです。現在国連WFPでは現金や食料引換券などを使い、受益者が自分で市場で食料を購入できる支援が増えてきています。しかし伝統的な食料支援を行える輸送手段も必要です。例えば西アフリカでエボラ出血熱が発生した際、国連WFPは緊急支援を行いましたが、現場へ支援物資を届けるためのロジスティクスの専門家が必要とされました。東アフリカ地域事務所は管轄地域に南スーダンを抱え、様々な輸送手段の確保が必要不可欠です。そのため新しい輸送手段の試験運用が多く実施されています。私はその試験運用のデータや情報をまとめるイノベーション推進のアシスタントも務めていました。
実際に関わっていたプロジェクトの一つに「SHERP(シャープ)」があります。SHERPは水陸両用車で、雨季に水没してしまう道路や突然出現する季節性の河川にも対応できます。私が東アフリカ地域事務所に派遣された時にプロジェクトが本格化し、その後コンサルタントとして働いた南スーダン事務所で試験運転が開始されました。このSHERPが導入された背景には輸送のコストダウンがあります。従来陸送が難しい地域では飛行機から支援物資を落とす「空中投下」が行われてきました。しかし燃料などのコストが高く、また綿密な準備を要します。その点SHERPであれば、一度の積載量が少なくとも道路状況が悪いところで支援物資のピストン輸送し、トラックからトラックへの支援物資の橋渡しが可能です。輸送コストを下げるということは、より多くの支援物資を届けられることにつながります。
物流担当官の仕事をしていると、実際に国連WFPの支援を受けている人の声を直接聴くことはなかなかできないことです。しかし出張時に支援現場で国連WFPの食料支援だけが頼りの人々の話を聞き、この支援が届かなかったら彼らは明日食べる食料がないという綱渡りの生活を感じました。自分の仕事が食料支援を必要とする人々の希望をつないでいることにやりがいを感じます。