情勢不安が続くイエメンにおける一筋の光
～国連WFPの学校給食支援と子どもたちの明るい未来～
2011年にイエメンで起こった政情不安は、2014年9月の武力衝突を招き、2015年3月には本格的な内戦を引き起こしました。結果、およそ300万人が住む家を失うことになりました。2017年11月に首都サナアで起こった紛争によって情勢はさらに悪化し、紅海の港が一時封鎖され、食料と燃料の不足および価格の高騰を招きました。この紛争はイエメンの人々の命を奪っただけでなく、衛生・教育および安全な社会などの基本的なサービスの提供を妨げ、2015年以降のイエメンにおける経済成長と収益の損失は、290億米ドルにも達すると推定されています。
紛争によって、約45％の世帯が主な収入源を失いました。長年にわたる紛争は、広範な貧困などの既存の問題と相まって、多くのイエメン人を前例のないレベルの食料不足、栄養不良、病気などに至らしめています。 2018年前半までに、人道支援を必要とするイエメン人の数は人口の約75％にあたる2,220万人に達しました。1,130万人が緊急の人道支援を必要としており、イエメンの333地区のうち107地区が飢饉のリスクが高いと見なされています。特に栄養不良の影響を受けるのは子どもたちで、推定200万人の子どもたちが急性栄養不良で、36万人が重度の急性栄養不良に苦しんでいます。 5歳未満の子どもの急性栄養不良のリスクは、激しい紛争のためアクセスが制限された地区で特に高い状況が続いています。
また、イエメンの教育システムはほぼ崩壊しており、400万人以上の子どもたちが教育分野における支援を必要としています。子どもたちはほとんど学校に通うことが出来ずに、前向きで明るい未来を失いつつあります。
このような状況下、国連WFPは学校給食支援によって子どもたちが安心して学校に通うことが出来る環境を提供し、飢餓問題だけでなく、教育面においても支援しています。給食として配給しているのは、栄養強化デーツバーまたは高カロリービスケット等で、どちらも一日あたり350kcal以上摂取することが出来ます。学校給食支援は、子どもたちの入学を促し、出席率と在籍率を安定させ、イエメンの崩壊しつつある教育システムの整備に貢献しています。
首都サナアのアルフスン地区にあるアルナーダ小学校に通うウェジダンさんが、家族の構成や国連WFPの学校給食支援、将来の夢などについて教えてくれました。ウェジダンさんは12歳で小学6年生、同じ小学校に通う10歳で4年生の弟がいます。両親、祖母、弟と一緒に暮らしています。
学校給食として出されるデーツバーが美味しく、一日に2回もらえるので満足とのことです。給食を安定して食べられ学校に通えるようになったことで前向きな気持ちになりました。ときどき聞こえてくる戦闘機の音が少し怖いけれど、学校は楽しいようです。将来はお医者さんになりたいという夢もあります。
国連WFPイエメン事務所の報告によると、学校給食支援によって、入学率は４％増加し、出席率・在籍率はそれぞれ85％、93％と安定した数値となりました。一方で、WFPの目標値にはまだ到達していないので、さらなる食料や資金の調達が必要です。
依然として内戦の不安が残るイエメンで、崩壊寸前であった教育システムが少しずつですが改善されつつあります。資金や物資が不十分で、課題は残っていますが、子どもたちの教育普及率は着実に伸びて来ています。ウェジダンさんのような輝く目を持つ子どもたちの希望に満ちた未来を応援すべく、今後も国連WFPはさらなる学校給食支援を展開して行きます。
