内戦下の母親、日本へ必死のSOS
子どもたちはお腹を空かせたまま眠りにつき、やせ細っていきます。4歳の娘が栄養不良でつらい思いをしているのに、母親の私はどうすることもできないのです-。
イエメンからの「手紙」
2015年から内戦が続くイエメン。国民の3分の2に当たる1780万人もの人々が食料不足に陥る、世界最悪の「飢餓大国」です。
飢餓に苦しむ母親の1人、ファティマ(35歳)は、日本の人々へ必死の" SOS"を発信しました。
当初、国連WFP職員は「手紙で状況を知らせてほしい」とお願いしました。しかしファティマの答えは「字が書けないのです」。そんな彼女が、口述筆記で私たちに託したメッセージです。
日本の皆さん
私はファティマ。5人の子どもの母親です。
今はサナアで避難生活を送っています。
今、私たち一家にはわずかな食べ物しかありません。子どもたちがお腹を空かせたまま眠りにつき、やせ細っていくのに、母親の私はどうすることもできないのです。栄養不良に陥った4歳の娘が苦しみ、痛みに耐える姿を見ているのは、とてもつらいです。
かつて私たちは、ここから260キロ南にあるイッブという町で暮らしていました。夫は良い仕事に就き、子どもたちも私も幸せでした。
でも内戦で、すべてが変わってしまいました。
私たちは戦闘が始まった2015年、サナアに逃げて来ました。当初、夫はパン屋に勤めましたが、紛争のせいで店は閉店してしまいました。
今、夫は路上で空き瓶拾いをして、工場に売って生計を立てています。1週間の稼ぎは10セントしかありません。これでは1日1食分のパンかお米を買うのがやっとです。
2か月前、私は娘のヤナが極端にやせてしまったことに気づきました。保健センターに連れて行くと、急性栄養不良と診断されました。
それから彼女は、国連WFPから栄養のある食事を支給されています。7.9キロしかなかった体重はやっと8.4キロに増えましたが、まだまだ栄養不良との戦いは続いています。
私たち夫婦は、少しでも暮らしを良くしたくてサナアに来ました。でも残念ながら、現実はそうはいきませんでした。
ただ、私は夫や子どもたちのためにも、いつかイエメンに良い日が来ることを夢見ています。娘も健康を取り戻し、いろんなことがきっと良くなる。今の生活はとてもつらいけれど、希望は持ち続けます。
ファティマ
「ママ、泣かないで」
ヤナの体重は、今も日本の1歳女児の平均体重(9・7キロ)にすら達していません。
こんなにまでやせ細ってしまっても、彼女は国連WFP職員に対して、母親を気遣ったといいます。
「お母さんは、わたしのことがすごく心配だって、よく泣いてるの。お母さんが泣いてるのはイヤ。泣き止んでほしいって思う」
今一番楽しいのは、兄弟たちとの人形遊びだというヤナ。将来の夢を聞かれると、こう答えました。
「私を助けてくれたみたいな、お医者さんになりたい」
苦境の中で希望を持ち続けるファティマと、今助けを必要としているヤナ。
紛争が長期化する中、親子が平穏な暮らしを取り戻す日は、遠のくばかりに見えます。
困難極める支援活動
国連WFPは昨年8月以降、イエメンで毎月6~700万人に対し食糧支援を続けています。しかし空爆や港湾周辺での戦闘激化で、活動は困難を極めています。
イエメン事務所のスティーブン・アンダーソン代表も、日本の人々に対してこのように訴えました。
「イエメンの人々の苦しみは、残念ながら100%、紛争という人為的な原因によるものです。日本は世界で最も平和な国の一つであり、ぜひ国際社会の一員として、イエメンに和平をもたらすよう働きかけて頂きたいと思います。またこの国の人々の苦しみを少しでも和らげられるよう、人道支援団体への経済的なサポートも、どうかお願い致します」