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COP27: 気候危機と記録的な飢餓の年

国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の開催地シャルム・エル・シェイクに、世界の指導者たちが集結しています。本記事では干ばつ、洪水、暴風雨による影響を特に強く受けている国々を紹介します。
, WFP Staff
Deborah conversa con una beneficiaria del proyecto.
「気候変動の結果、私たちは本当に大きな影響を受けています」と、彼女のふるさとであるグアテマラの先住民コミュニティについて話すのは国連WFPの農学者デボラ・スク。Photo: WFP/Nelson Pacheco

すさまじい規模の暴風雨、干ばつ、そして洪水が、いまだかつてない世界的な食料危機をさらに深刻なものにしています。世界中のあらゆる場所で、気候変動による破壊的な影響が、最も貧しい人びとをすでに襲っています。このような人びとは、土地と予測可能な気候を今後の生活の頼りにしているのです。一方で国連WFPは、地域社会や政府が備え、対応し、回復するために必要な支援を行なっています。

気候変動と、猛威を振るう飢餓への対策をとるのに、遅すぎるということはありませんが、迅速に行動する必要があります。


洪水
Family in Lasebela, Balochistan are among millions reeling from the effects of  this year's record flows. Photo: WFP/Balach Jamali
バロチスタン地方ラスベラの家族。最近のパキスタンでの洪水は、数百万もの人びとの生活を一変させました。 Photo: WFP/Balach Jamali

3300万人に影響を及ぼした記録的な洪水によって、8月から9月にかけてパキスタンの国土の3分の1が水に浸かり、地域コミュニティは土地を追われ、道路、橋、生活基盤が破壊されました。

地球で年間に排出される温室効果ガスのうち、パキスタンによる排出量は1%に満たないにもかかわらず、この国は世界で最も気候変動の影響を受ける10か国のうちに入っています。この洪水の前には、かつては1000年に1度起こるかというような事象であった猛烈な熱波が来ており、気温が常に45℃を超える、干ばつの緊急事態が続いていました。

最も弱い立場にある270万人に食料・栄養と回復するための支援を届けられるように、国連WFPはパキスタン政府を支援しています。今後を考えると、国連WFPにとっての優先事項は、パキスタンの人びとが生活基盤を取り戻し、長期的な目線で災害に強い地域社会を築き、結果として小規模農家と食料システムを守れるように支援することです。

The funds reached, Bhagiram Sunaha in western Nepal, who lost his home and possessions in the del-uge — but rescued his family and livestock with his rickety wooden boat. “This is the first time I have received this kind of support,” says Bhagiram, who is spending it on food. “I am very happy.”  PIC-CAP
ネパール西部・バルディヤ地区のバジラムさんは家を失いましたが、古い木のボートで家族を救出することができました。彼は国連WFPから予測型現金支援を受けました。Photo: WFP/Srawan Shrestha 

ネパールも同様に、ここ数週間にわたって豪雨、危険な鉄砲水や地滑りに見舞われました。「信頼できる気象予報があれば、異常気象を予期して、事前に必要な行動を取ることができます」と国連WFPネパール事務所ロバート・カスカ代表は述べます。「国連WFPは、リスクにさらされているコミュニティへ現金支給や早期警戒メッセージを発信することで、ネパール当局をサポートしています。」

一方で西・中央アフリカ一帯も、命を脅かす洪水に襲われました。19か国の500万人が被害を受け、すでに憂慮すべき状況にあった食料危機が、さらに悪化しています。国連WFPは、政府や地域社会が異常気象による被害を防いだり、軽減したりできるように支援しながら、地域の対応力を強化しようとしています。支援の例としては、早期警戒メッセージや、水を利用するための「半月型」を地面に掘り、劣化した土地の回復を促すような農業技術が挙げられます。

西アフリカの国々、モーリタニア、マリやブルキナファソでは、国連WFPはさらに940万米ドルのアフリカ連合気候保険の支払いを実施し、甚大な被害をもたらした2021年の干ばつから地域社会が立ち直るのを援助しました。

 

Burkina Faso: People in soil rehabilitation project in Sirghin dig half-moon shapes to harness water and rehabilitate the soil
ブルキナファソ: 水を利用して土を回復させるための「半月型」を掘るシルギンの人びと。 Photo: WFP/Evelyn Fey

「昨年は干ばつの影響で作物が取れませんでした」とブルキナファソ中北部(サントル・ノード)地方の農家、カリム・ソアさんは言います。「しかし [国連WFPの] 気候保険金のおかげで、子どもの学費を払うことができ、家族にとって基本的な必要な物を満たすことができました。」


紛争に引き裂かれたイエメンは今年、激しい豪雨と広範な洪水に襲われました。インフラと住宅が被害を受け、73万人が食料やその他の緊急支援を必要としています。

すでに悲惨な状況にあるこの国の飢餓を、気候ショックがさらに悪化させており、2000万を超えるイエメンの人びとが、人道支援を必要としています。しかしながら、イエメンにとってより大きく長期的な問題は、水不足です。一部の専門家の予想では、今後2数十年のうちに、この国の水は枯渇する可能性があるといいます。そして気候変動が、大規模な環境破壊とあわさって、国内の緊張状態を今以上に悪化させる恐れがあるといいます。

Al-Gorafi near Mokha Hebatallah Munassar
「以前は洪水が怖くて、夜も眠れませんでした」と10人の子どもがいるサイードさんは言います。彼はイエメンのモカに近いアル・ゴラフィの村で、防壁を建てる国連WFPのプロジェクトに参加しました。Photo: WFP/Hebatallah Munassar

命を救うための食料支援と同時に、国連WFPは地域のコミュニティとも協働して、異常気象に強い社会を築こうとしています。西部の村アル・ゴラフィの洪水防壁がその一例です。

「以前は洪水が怖くて、夜も眠れませんでした」と、10人の子どもの父親であり、このプロジェクトに参加したサイードさんは言います。「防壁が村とここにある遺跡を守ってくれるでしょう。」

干ばつ
A pastoralist in Borenna, Oromia region, with the remains of her livestock, in September
エチオピアのオロミア州近くに住むトゥメ・ゲルボレさんは、国連WFPのセーフティネット・プログラムによる支援を受けています。長く続く干ばつによって彼女は20頭を超える畜牛を失いました。 Photo: WFP/Michael Tewelde

世界で最も気候変動の影響を受けやすい国の1つであるソマリアでは、異常気象が過去30年で3倍に増加したと専門家らは言います。現在、過去40年間で最も長い干ばつと、世界的な食料危機からの反動があわさり、およそ670万の人びとが深刻な飢餓に直面しています。そして、人道支援が著しく拡大しない限りは、30万を超える人びとが壊滅的なレベルの飢餓に直面することになります。

資金や安全性という課題があるにもかかわらず、国連WFPはソマリアでの支援を急拡大しており、食料・栄養支援を記録的な数の人びとに届けています。対象は9月だけでもおよそ460万人にのぼりました。国連WFPでは当座の支援だけでなく、政府機関の対応力を底上げするための投資を行い、より災害に強く、人道支援への依存を減らせるようになるためのツールをソマリアの人びとに提供しています。

「ソマリアでは、短期的に「予測型現金支援」と呼ばれるプログラムを、干ばつの被害を最も受けた地域において開始しました」と、国連WFPの気候・災害リスク削減プログラム担当責任者であるゲルノット・ラガンダは説明します。「不作の時期がやってくるのをただ待つだけではないということです。予測に沿って活動し、それが基準値を超えた場合には、損害が発生する前に支援を提供します。

エチオピアとの国境に近い、ソマリアの南の町ドーロゥでは、35歳のムフバ・ハッサン・ワルサメさんが、国連WFPによる災害に強い地域社会を構築するプログラムの恩恵を受けています。このプログラムによって、彼女は農園を作るための土地1区画と物資を得ました。「このプロジェクトを通じて、農園を耕し、作物を植え、収穫を保存するための技術を学びました」とムフバさんは言います。「暮らしが変わり、状況は良くなりました。」

中央アメリカの"ドライ・コリドー(乾燥回廊)"地域にあるグアテマラもまた、世界的にみて異常気象の頻発地域になっていますが、そこへ別の危機も重なっています。国連WFPと研究グループCGIAR(国際農業研究協議グループ)による最近の共同研究によると、気候のぶれ(長期の乾燥期から、季節外れの豪雨)は、飢餓、貧困、不平等をより深刻なものにし、紛争を悪化させるといいます。実際のところ2009年以降グアテマラでは、降雨量が44%という驚くべき割合で減少しています。

国連WFPはドライ・コリドー地域の国々に暮らし、脆弱な立場にある何十万人もの人びとが、気候変動に適応できるように支援しています。資産を築き、生活基盤を構築し、そして劣化した耕作限界地を回復させ、森林を再生させるといったプロジェクトを通じた取り組みです。



「コリアンダー、タマネギ、チピリン、ナス科の植物、ハヤトウリ、カボチャ、キャッサバ、他にもささやかなものを植えました」と話すのは、グアテマラ東部チキムラ県で、女性農業グループのリーダーを務める32歳のダマリス・レイエスさん。グループは国連WFPのサポートのもと、干ばつに強い農作物を育て、有機農薬を作っています。「私たちの土地で採れる野菜で、週に700ケツァル(88米ドル)ほど節約することができます。野菜の値段は現在とても高いからです。」


暴風雨
Typhoon Rai devastation
2021年12月17日、台風ライ上陸後のフィリピン・シャルガオ島の惨状。Photo: Ryan Matias

フィリピンは例年平均して、20の暴風雨や台風に襲われます。このような異常気象は、気候変動によってより破壊力が高く、予測がつかないものになると考えられています。昨年12月にフィリピンは、北半球で上陸したもののうち過去3番目に強力な台風に見舞われました。一夜にして何百人もの命を、そして何千もの人びとから住む場所を奪ったこの台風ライによって、1200万人以上が被害を受けました。国連WFPは関係機関やパートナーと協働して、脆弱な地域社会に食料支援を届け、生活の再建を持続的に支援しました。

過去1年で、およそ8万人が国連WFPによる台風ライ復興プロジェクトの恩恵を受けました。プロジェクトは、がれきが散乱した沿岸地帯の清掃から、損壊した道路の修復、マングローブ(嵐に対する防壁としても、気候変動を緩和する役割としても重要)の復元、そして地域の庭園の整備まで、多岐にわたります。「地域はとてもきれいに、緑豊かになりました。そして最も重要なことに、国連WFPの支援を受けた人びとは、この良くなった状態を進んで維持しようとし、コミュニティ主体の定期的な清掃活動を始めたのです」と、台風への対応支援に携わった国連WFPのアリス・フォロスコは言います。

Dozimène in Limbé Haiti with her child. Photo: Theresa Piorr
ハイチでは気候関連災害への脆弱性が、飢餓をますます深刻なものにしています。Photo: Theresa Piorr

貧困、森林伐採、地震のリスク、そして異常気象といった多くの要因によって、ハイチはラテンアメリカ・カリブ諸国のなかでも、気候変動に対して最も弱い国となっています。これら複数の要因から生じてくるのが、犯罪・貧困・高い物価という危険な組み合わせであり、これが飢餓という大惨事を引き起こしてきたのです。

非常に困難な活動環境にもかかわらず、国連WFPはハイチ当局や地域社会と協働して、流域管理や、インフラの復旧、緊急事態への備えといったプロジェクトを実施することで、気候変動と闘っています。例として、北部コミューンのランべ郡では、6人の子どもの母親でもある60歳のドジメネさんが、洪水被害を受けた用水路や道路を修繕する国連WFPのプログラムに参加することで、月70米ドルを受け取っています。

「こういった活動が、私と子どもたちの生活を本当に変えてくれました」とドジメネさんは言います。彼女は受け取ったお金を食料や交通に使い、残りは市場で洗剤を売る小規模ビジネスに投じました。

国連WFPの気候危機に関するストーリーズはこちら、気候変動への対応についてはこちら

 

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