深刻化する子どもの栄養不良に対して行動を呼びかける国連機関
バスマ・モフィードちゃんは生後数か月で病気になり、急激な発熱と口内炎を発症しました。 母親のハナ・アブドゥラさんは、冷湿布で対処しようとしました。
イエメンの南東部の都市タイズ県では、紛争のために手頃な価格で栄養豊富な食料を確保することや、医療サービスへのアクセスがますます困難になっています。そのタイズ県に住む母親のハナさんは、娘の回復を助ける他の手段がほとんどありませんでした。
「生活は苦しいです」とハナさんは言います。「食べ物もほとんど買えません。」
バスマちゃんは、他の多くのイエメンの子どもたちと同様に、急性栄養不良に苦しんでいました。これは、幼い子どもたちに持続的かつ時に致命的な影響を与える世界的な危機であり、特に世界の最貧国において拡大しています。
WFP国連世界食糧計画(国連WFP)は現在、他の4つの国連機関(国連食糧農業機関(FAO)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO))とともに、イエメンを含む最も深刻な被害を受けた十数か国以上を対象とした行動を呼びかけています。
この集団的対応は、世界規模で消耗症の予防、発見、治療に取り組む国連の「子どもの消耗症に関するグローバル・アクション・プラン」の下で行われます。この計画では、食料、保健、栄養、水と衛生、社会的保護制度にまたがる優先的な行動を含む、急性栄養不良に対する複数分野にまたがるアプローチの必要性を概説しています。
栄養面で脆弱な集団の中で、子どもの急性栄養不良を予防・治療するためには、これらの行動を協調的なパッケージとして拡大することが不可欠です。
「最も深刻な影響を受けた15か国では、3,000万人以上の子どもたちが急性栄養不良に陥っています。したがって、私たちは今すぐ行動を起こし、共に行動しなければなりません。」こう語るのは、国連WFPのデイヴィッド・ビーズリー事務局長です。「私たちが協力して社会的セーフティーネットと食料支援を強化し、特別な栄養強化食料を最も必要とする女性と子どもたちが利用できるようにすることが重要です。」
バスマちゃんは幸運でした。国連WFPが支援する保健クリニックで、中程度の急性栄養不良の治療を受け、1歳になった今、元気に成長し、歩けるようになりました。
2022年に国連WFPは、致命的な栄養不良に苦しむ世界中の約2,000万人の幼い子どもと母親に対して、その治療と予防のために活動しました。ハナさんとバスマちゃんもその中に含まれます。しかし、紛争、気候変動、食料・燃料価格の高騰、拡大する人道的資金の不足など、ニーズと課題は計り知れないものであり、何百万人もの弱い立場の人びとは支援の網ですくいきれず、その隙間からこぼれ落ちています。
飢餓が深刻化しているイエメンだけでも、5歳未満の子どものほぼ半数にあたる約220万人と、130万人の妊産婦が急性栄養不良に直面しています。
生きるための闘い
サハラ以南のアフリカでは、南スーダンで、紛争、気候変動、食料・燃料費の高騰により、憂慮すべき栄養不良の割合がすでに悪化しています。
「200万人の幼児と妊産婦を含む人口の60%以上が、収穫期前の食料不足のピークを乗り切ろうと必死にもがいています」と、マケナ・ウォーカー国連WFP南スーダン事務所代表代理は述べています。「幼い子どもや妊娠中・授乳中の女性は、急性栄養不良の影響を最も受けやすいのです」。
その中には、10年前の長く続いた自国の紛争ですべてを失い、現在は首都ジュバの避難民キャンプで暮らす27歳のニャリエック・ボルさんもいます。 第二子を妊娠中の彼女は、昨年栄養不良の治療を受け、国連WFPから栄養強化のブレンド穀物の支給を受けました。
「昨年8月にテスローチを産んだとき、体重は3.5キロでとても健康でした」とニャリエックさんは話します。
国連WFPとそのパートナーによる重要かつタイムリーな栄養支援によって、ニャリエックさんとその赤ちゃんのような多くの人びとが健康を維持することができています。しかし、気候危機の最前線にあるなど、南スーダンの課題は困難であり、資金不足のため、国連WFPは最も飢餓に苛まれる人だけに優先的に人道支援を行うことを余儀なくされています。
現在、南スーダンでは約140万人の子どもたちが栄養不良で苦しんでいます。そのうち10万人以上が治療を受けなければ命を落とす危険性があります。
エチオピアでも、社会不安と気候変動の衝撃により、飢餓と栄養不良が憂慮すべきレベルにまで押し上げられ、多くのコミュニティで生計をたてる手段が破壊されています。
同国南部のボレナ地区では、厳しい干ばつにより、この地域の牧畜民にとって重要な食料および収入源である家畜がほぼ全て死んでしまいました。
この影響は、生後18か月のリベン・ケフェラちゃんのような幼い子どもたちに特に大きな打撃を与えています。リベンちゃんの家族は、1日1回、1杯のトウモロコシのお粥しか食べることができません。
「家畜はほぼ全滅し、生き残った家畜も非常に弱っており、市場価値はありません」と、リベンちゃんの母シェドルさんは言います。シェドルさんは、息子の衰弱に気づき、病院に連れて行きました。
栄養不良と診断されたリベンちゃんは、国連WFPが提供する専用の栄養補給食品を供与されています。母親は、子どもたちが健康で十分な教育を受けながら成長することを願っています。しかし、今は生きることで精一杯なのです。
「この支援がなければ、私の息子の命はどうなっていたか分かりません」と、シェドルさんは国連WFPの支援について語ります。「私には、この子を助ける手段が他になかったのです。」
困難を和らげるために
それでも、いくつかの答えが見えてきています。チャド中央部のバール・エル・ガザールでは、食料危機や栄養危機が頻発し、厳しい気候、降雨不足、悪化する治安、および国境の閉鎖により、人びとの生計が破壊されています。
しかし、国連WFPが支援するチウォルウ保健センターは、近隣のコミュニティに保健・栄養サービスを提供し、さらなる困難に対する重要な緩衝材となっています。
「衛生習慣、清潔な水と衛生設備へのアクセス、そして乳幼児の母乳育児の促進を含む幼児のケアと給食は、急性栄養不良の発生を減らすのに役立っています」と、ハイセット・ファンガ国連WFPチャド事務所栄養担当官は述べています。
しかし、国連WFPが活動する多くの国々では、急激な物価上昇により、長期的な食料・栄養の安全保障と強じん性を築くための懸命な努力が危機に瀕しています。例えば、チャドが位置する中央サヘル地域全体で、昨年は推定600万人の子どもたちが急性栄養不良に直面しました。
しかし、近隣のブルキナファソでは、国連WFPのプロジェクトが国の食料システムを強化し、人びと、特に幼い子どもや妊娠中・授乳中の女性が、栄養価の高く多様な食料を購入できるようにサポートしています。
欧州連合の支援を受け、マリやニジェールでも展開されているこの取り組みは、中央サヘル地域の食料・栄養危機に対し、最も弱い立場に置かれたコミュニティ向けに栄養価の高い食品の生産、加工、販売も対象とした包括的なアプローチを提供するものです。
ブルキナファソの首都ワガドゥグの北東に位置する都市カヤで、シモン・キエンドルベオゴ国連WFP栄養担当アソシエイトは、「私たちは、女性や子どもの栄養状態の改善と、将来の世代の栄養不良を防ぐためのシステム強化を支援することができます」と話します。
サワドゴ・マモウナタさんは、国連WFPが発行した引換券を使って栄養価の高い強化食品を購入しています。これにより、母乳育児中の彼女は健康で丈夫になり、幼い子どもたちの成長にも役立っています。
「子どもたちに変化がありました。支給された栄養強化小麦粉のおかげだと思います」とサワドゴさんは言います。「子どもたちは以前よりずっと健康です。一番下の子は10か月でもう歩いています。」
子どもの急性栄養不良の影響が最も大きい15か国は、以下の通りです。
アフガニスタン、ブルキナファソ、チャド、コンゴ民主共和国、エチオピア、ハイチ、ケニア、マダガスカル、マリ、ニジェール、ナイジェリア、ソマリア、南スーダン、スーダン、イエメン。