不可能な選択:ボリビアが直面するコロナの難題
国連WFPは、人々が医療よりも食料を優先する必要がない生活を送れるよう、支援します
新型コロナウイルスは、弱い立場に置かれた人々を次々と命の危機に追いやっています。健康不良、過度な治療により弱体化した免疫システム、高齢、栄養不良、過密かつ不衛生な生活環境など、すべてがウイルスによりさらに致命的になっているのです。
コロナ禍において、上記のような要素が絡まると、人々の生活は非常に厳しい戦いになります。
ホアン・カルロス・カサスは、ボリビア第二の都市エル・アルトに住んでいます。彼は腎臓に疾患があり、15年前から週3回の透析を受けています。「腎疾患の患者にとって良質の食事は非常に重要です。私たちは他の人たちのように何でも食べられるわけではないのです」と彼は訴えます。しかし3月21日から国が完全に封鎖されて以来、ホアン・カルロスは食料を制限しなければならず、疾患対策に必要な特別な食料も手に入れることができていません。「自分を含め、かつて仕事を持っていた人や、仕事があって私たちを支えてくれた家族でさえ、現在仕事がありません。」
ボリビアの人口の約60%が、バスの運転手や清掃員、露天商などのインフォーマルセクターで雇用され、その日暮らしの生活をしています。そのため彼らの中には、コロナによる制限で自宅を離れられず、唯一の収入源を失う人が続出しています。慢性疾患を抱えている人や治療中の人は、食料を買うか、薬代や病院までの交通費を払うか、という不可能な選択をしばし迫られることがあります。多くの場合、命を救うための治療を途中でやめざるを得なくなってしますのです。
新型コロナウイルスによる経済的影響を緩和するため、国連WFPは3月、エル・アルトと首都ラパスの1,500世帯に電子キャッシュカードの配布を開始しました。カードには初期費用として123米ドルがチャージされており、世帯ごとのニーズに応じて、栄養トレーニングに参加することを条件に、WhatsAppや他のチャネルを介して定期的に再チャージされます。
「この支援は本当に必要なものです」、5歳のドノバン・タケシの母ヴィルマは話します。タケシとはラパス近郊のアンデスの登山道の名前ですが、この小さな少年の命もまた険しい登り道でした。彼は3年前に進行性の白血病と診断され、現在再発治療を受けているのです。
「この2カ月間、私はかつてほど稼げていません」、ヴィルマは話します。タケシの病気が判明する前は、彼女は父親の家でコーヒーショップを経営していましたが、息子の世話をするためにそれを閉鎖しなければなりませんでした。現在彼女は雑誌、化粧品、靴などを戸別に売り歩いていますが、収入は思うように上がりません。
「何もかもが高いので、我が家の出費はかさみ続けています。私が辛うじて稼ぐお金である程度は賄えますが、必要なものをすべて買うことはできません。」
国連WFPの支援を受けて、ヴィルマはレンズ豆、小麦、穀物、牛乳、キヌア、新鮮な果物、チーズなどを購入する予定です。「タケシはチーズをたくさん食べるので小ネズミのようなんです」。と彼女は言います。ヴィルマはまた消毒剤や掃除用品も買うつもりです。「タケシの免疫力は低いので、掃除には細心の注意を払わなければなりません。なるべく外出しないようにもしていますし、非常に厳しい決まりを守っています。」
2月1日に退院したタケシは、医師から「治療に耐えるのは厳しいので、緩和ケア(QOLを向上させるために苦痛を緩和させるケア)を受けさせましょう」と言われました。「彼が家に帰ってきたとき、彼は弱り切っていました」とヴィルマは振り返ります。「しかし1週間後にタケシが病院に戻ったとき、医師は驚いていました。以前は、痛みで歩くことさえできませんでしたが、今では子猫のように遊び回って笑っているんです」と彼女は言います。新鮮な果物や野菜をふんだんに使った栄養価の高い食事を与えたことが、彼の回復の重要な決め手となったのです。
国連WFPボリビア事務所代表のアナ・マリア・サルワナは言います、「食卓に食べ物を並べることと、自分自身や愛する人のために救命治療を受けることの二者択一という不可能な選択を、誰も迫られるべきではありません」。彼女は加えます、「私たちが支援している人々の多くは、今年の初めからすでに政治不安による経済的な影響を受けていました。新型コロナウイルスが彼らにとって最後の一撃となる危険性があります。」
ヴィルマが母親ならではの楽観的な考えで未来を見据える中、国連WFPはコロナウイルスでますます弱い立場に置かれている人々を支援していきます。