洪水保険がバングラデシュの異常気象に直面している人々に力を与える
2020年6月、国連WFPは、オックスファム・バングラデシュ、気象リスク管理サービス、グリーンデルタ保険会社と共同で、モンスーンによる長期の洪水の影響を受けた不定期農業労働者を支援するため、気候リスク保険の試験的取り組みを開始しました。KOICA(韓国国際協力団)の資金提供を受けたこの計画は、洪水によって弱い立場に置かれた家族に賃金を補償することで、彼らが自立し、長期的な悪循環を防ぐことを目的としています。
毎朝、夫が仕事に出かけると、アフロザさんは家事全般をこなし、アヒルやヤギの世話をします。彼女の夫は大工であり、安定した収入がありません。1日の賃金が200バングラデシュ・タカ(2.5米ドル以下)では4人の家族を養うことができないため、夫婦は農家が所有する土地を耕して収穫物を分けてもらう借地農民として働くこともあります。
彼らは、クリグラムのチルマリという地域にある、チャールと呼ばれる中州で生活しています。チャールとは、河川の堆積物によって新たに形成された土地のことで、バングラデシュには500万人の人々が住んでいると言われています。このような人々は、1億6千万人の人口を抱えるこの国で最も弱い立場に置かれたグループのひとつであり、絶え間ない洪水や浸食、そしてこのような不安定な環境で将来の見通しも不透明な生活に苦しんでいます。
「もしお金があったら、ここには住まないでしょう。家族と一緒に本土に引っ越します」と、アフロザさんは話します。
ほとんどのチャールは島であるため、アフロザさんのような家族は、栄養価の高い食品、医療、教育、衛生などの必需品へのアクセスが不足し、孤立していると感じています。
ブラマプトラ・デルタに位置するクリグラム地方のチルマリ地区に住む人々は、毎年、モンスーンの時期に家屋や農作物を破壊する洪水の破壊力をよく知っています。
しかし、気候変動による気象傾向の変化により、より大量の予測不可能な雨が降るようになりました。これが上流のヒマラヤ山脈の氷河の融解による流れと合わさると、未曾有の大洪水が発生し、その期間も長くなります。水が引くまで生活を我慢するわけにはいきません。
アフロザさんは、自分たちが住んでいる小さな土地が水没してしまうと、子供たちに食べ物や適切な教育を与えることができないと悩んでいます。「洪水の間は仕事がありません。子供たちはいろいろなものを食べたがりますが、私には買えません」と、アフロザさんは語ります。
「私は保険料を負担してもいいと思っています。なぜなら、私が受け取る保険金は、将来的に私の役に立つからです」と、彼女は話します。
計画の仕組み
気候リスク保険イニシアチブの全体的な目標は、洪水の影響を受けた地域の世帯が気候変動ショックに対処する能力を高め、同時に食料の確保・入手への脅威を軽減および管理する能力を向上させることです。
この計画は、19年間にわたって収集された衛星データの分析に基づいており、最新の水位と降雨のデータに裏付けられています。(大災害時にチャールの住民が受け取る保険金は、地理的な総面積に占める「浸水面積」の割合や浸水期間など、あらかじめ設定された洪水指数に基づいています)
今回のプログラムは、国連WFPとしては初めて、指数ベースの洪水保険商品の設計・販売を支援するものです。
国連WFPは、「R4農村レジリエンスイニシアチブ」と「アフリカリスクキャパシティ」のイニシアチブを通じて、世界の最も弱い立場に置かれた人々に気候変動リスク保険を提供している主要な国連機関です。
この計画で得られたデータは、貧困層や最も弱い立場に置かれた人々にとってより適切な保険商品の設計に役立てられます。国連WFPとそのパートナーは、今後のモンスーン洪水からの保護を強化するために、今までに学んだ教訓を取り入れていきます。
2020年のモンスーンシーズンに、バングラデシュでは過去20年間で最大かつ最長の洪水が発生したので、この計画はタイムリーなものだったといえます。 これにより、登録した各世帯に32米ドルが支払われました。
グリーンデルタ保険会社はモバイルマネーのプラットフォームを通じて保険金を送金したため、アフロザさんの家族のようなチャールの住民は、洪水による損失を克服し、食料を購入したり家を再建したりすることができました。
しかし、チャールでの生活の課題はまだ解決されたわけではありません。 これまでと同じように、新しい年を迎えても苦労が続くかもしれません。しかしアフロザさんはこの計画で、子供たちのより良い、より明るい未来を確信することができるようになりました。
国連WFPのバングラデシュでの活動について