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2国間をつなぐ穀物

, WFP日本_レポート

かつて残虐な内戦に巻き込まれていた2つのスーダンは、いまや共通の敵である飢餓を相手に共に戦っています。

トムソン・フィリ

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南スーダンの主食である「ソルガム」の原材料が洗われています。写真:WFP/Gabriela Vivacqua

かつてスーダンは1つの大きな国でした。2011年に分裂し、新たに南スーダンが独立しました。しかし、スーダンと南スーダンには名前以外にもつながりがあります。例えば、北部で栽培され南部の隣国に輸出されている穀物です。この穀物によって昔からの関係が強化されています。

人道的な結びつき

2014年にスーダンのハルツームと南スーダンの首都ジュバの間で、より食料不足が深刻な南スーダンの人々に食料を届けることを目的とした輸送路を開通するための覚書が締結されました。道路およびナイル川を利用して広大な2国間をつなぎます。

「ニーズが高まった時に、より多くの人に素早く食料を届けることができます」

輸送路によって南スーダンの数百万人の人々が切望している支援物資が届けられるだけではありません。この輸送路によって経済的な困難に直面している小規模農家に必要とされているビジネスも提供されます。

積み荷を満載したトラックが北部から南スーダンにガタゴトと進んでいくのは一般的な光景になりました。2014年に締結された覚書以降、北部からアウェル、ベンティーウ、レンクの町を通り、20万トン以上の食料支援物資が運ばれました。

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スーダンと南スーダンの国境であるレンクに並ぶトラック。写真:WFP/Muhammad Salah
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南スーダンのベンティーウで荷下ろしを待つスーダンの車両。写真:WFP/Gabriela Vivacqua

「この国境を挟んだ活動により、私たちは効率的に物資の購入や輸送ができるようになりました。輸送にかかる時間を削減し、空輸に要する業務コストを劇的に減らすことができるのです」と南スーダンの国連WFPカントリー・ディレクターであるロナルド・シバンダは語ります。「ニーズが高まった時に、より多くの人に素早く食料を届けることができます」

深刻な食料不足

南スーダンの食料不足の状況は切迫しています。5月から7月の間に飢餓がピークを迎えると予想されています。数値が示すところによると南スーダンの1,100万人の人口の半分近くが深刻な食料不足に見舞われており、約600万人が次の食事をどこから入手できるか分かっていないのです。

国連WFPは今年末までに約540万人の人々に様々な支援を提供するために対応を強化しています。

「雨季には南スーダンの道路は通行できなくなってしまうため、国連WFPは6月までに17.3万トンの食料を60の地域に事前に用意しました」とシバンダは言います。「これは2018年の同時期に比べ6.6万トンも多いです。」ほとんどが輸送路を使って運ばれました。

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南スーダンに送られる前にスーダンで縫い閉じられるソルガムの袋。写真:WFP/Alaa Kheir

当初、輸送路は米国からスーダンのポート・スーダンに到着し、紛争の影響を受けた弱い立場にある南スーダン奥地の人々に直接食料を輸送するための安く、早い方法として整備されました。

地元で農産物の生産を拡大するための米国と国連WFPスーダン事務所とのパートナーシップは、いまや利益を生み出しています。次第にソルガムの多くがスーダンで供給されており、大抵は小規模農家から仕入れられています。小規模農家の労働者の60%が女性です。

スーダンの穀倉地帯

2018年は比較的収穫量が多く、国連WFPはスーダンの戦略的穀物備蓄から11万トンのソルガムを購入しました。半分以上が南スーダンに運ばれました。

スーダンは、そのユニークな地理的位置のため、地域の物流の中心地になることができました。人道支援物資を近隣の不安定で海に面していない不安定な国々に発送することが可能です。

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スーダンのガダーレフで生産され袋詰めされたソルガムの航空写真。写真:Photo: WFP/Alaa Kheir

ソルガムはスーダン東部でもっとも大きなサイロ(一時的に穀物を貯蔵する円筒形のタンク)のいくつかがあるガダーレフ州で栽培されています。スーダンでもっとも多く農産物を生産する州であり、スーダンだけではなく地域全体の穀倉地帯です。この地域ではソルガム、ミレット、ゴマ、ピーナッツの他、多くの作物が栽培されています。今年、スーダンではソルガムの収穫が多いと予想されています。

スーダン農業銀行は戦略的備蓄のためにガダーレフに巨大なサイロを所有しており、保存能力は50万トンにもおよびます。

しかし、巨大なサイロには近隣農家の生産量は入りきらず、地下の貯蔵庫も使用されています。

ここでは穀物を3年間保管することが可能です。密閉された状態のため、ゾウムシやその他の害虫を寄せ付けません。地下貯蔵設備から出されたソルガムはトラックに積み込まれ、ふるいにかけられるためサイロに運ばれます。

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スーダンのガダーレフにあるサイロでは50万トンの食料を保管することができます。写真:WFP/Alaa Kheir

地下貯蔵庫への訪問は、まるで蜂の巣がある養蜂場を訪れるようです。ただし出入りしているのはトラックです。人手が多ければ仕事は楽になります。人びとは酷暑の中、負担を軽くし時間が過ぎ去るのを待つために歌を歌います。ソルガムは円筒形のサイロを通り袋詰め作業所に流れていきます。

袋詰めされたあと、口が縫い合わされ運搬機に載せられます。南へ送られる準備ができました。この後、誰が消費するのか、そして国境を越えたもっとも弱い立場のコミュニティに属している人々の命をどのように救うことになるのか、ソルガムの袋には知る由もありません。今年、国連WFPはスーダンと南スーダンでの活動のために、さらに12万トンのソルガムを購入する予定です。

スーダンのベリンダ・ポポフスカによる追加取材