世界的な食料危機で苦しむ飢餓のホットスポット、国連WFPとFAOが警鐘を鳴らします
6カ国において、過去最多数の人びとがすでに飢餓状態にあるか、またはその瀬戸際にあることを、新たな報告書が警告しています。
最新の報告書「飢餓のホットスポット」によれば、アフガニスタン、エチオピア、南スーダン、ソマリア、イエメンにおいて、過去最高の97万人が壊滅的なレベルの飢餓に直面していることが明らかになっており、5年前の10倍にもなっています。暴力が激化し、飢餓に苦しむ人びとへのアクセスを妨げているナイジェリアと並んで、これらの国々の状況が懸念されています。
WFP国連世界食糧計画(国連WFP)とFAO国連食糧農業機関(FAO)が作成したこの報告書は、膨大な数の人命損失を防ぐため、2022年10月から2023年1月の間に合計19の「飢餓のホットスポット」に対して緊急の人道的行動を起こすよう呼びかけています。新たな人道的需要が顕在化する前の短期的な保護措置や、現状に対応するための緊急対応など、国別の行動勧告も打ち出しています。
この報告書は、紛争、気候変動、数百万人を危険にさらす世界的な景気後退の脅威など、世界が直面する近代史上最大の食料危機を発表したものです。
国連WFPによると、82カ国で過去最高の3億4,500万人が深刻な食料不足に直面しており、昨年末の2億8,200万人から増加しています。45カ国で最大5,000万人が飢餓に直面しており、支援がなければ多くの人命が失われる危機にあります。
「世界は、現代史上最大の、前例のない食料危機に直面しています。今すぐ行動を起こさないと、何百万人もの人びとが悪化する飢餓の波に飲み込まれる危険があります」と、キアラ・パランチ国連WFP分析・早期警戒ユニット上級分析官は述べています。
「私たちには選択肢があります。これらの前例のないニーズに直面して今行動し、命を救い、すべての人びとの安定と平和を確保する解決策に投資することです。そうしなければ、世界中の人びとが増大する食料不安、さらには飢きんに直面し、移住を余儀なくされ、社会不安、紛争を引き起こすことになるでしょう。」と、キアラ・パランチ分析官は付け加えます。
「現在、食料と栄養に対する世界のニーズが、まもなく国連WFPや他の組織の対応能力を上回る可能性があるという非常に現実的なリスクがあるのです。」
ソマリア、エチオピア東部・南部、ケニア北部・東部では、最大で2,600万人が危機的状況またはそれ以上の食料不安に直面すると予想されています。資金不足により人道支援が削減される危険性がある中、ソマリアでは大規模な飢餓による死者が出る恐れが大きくなっています。栄養不良と死亡率がすでに憂慮すべきレベルにあるソマリア南部ベイ地域のバイドアとブルハカバ地区の農村住民とバイドアの町の避難民の間で飢きんの発生が予測されています。さらに、ソマリア中央部および南部のいくつかの地域では、少なくとも12月までは飢きんのリスクが高止まりします。
ソマリアが飢きんのリスクに直面、あるいは実際の飢きんに直面するのは、この10年間で3度目です。デイビッド・ビーズリー国連WFP事務局長は次のように述べています。「現在私たちは、5シーズン連続の凶作と、2023年まで続く可能性が高い干ばつという複数の厄災により壊滅的な状況を迎えつつあります。さらに、この危機の淵に立たされている人びとは、食料価格の高騰とパンデミック後の収入減少にも直面しています。」
コンゴ民主共和国、ハイチ、ケニア、サヘル、スーダン、シリアは引き続き「非常に高い懸念」があり、生命を脅かす状況が見通し期間中にさらに悪化することが予想されます。
組織的な暴力や紛争は依然として深刻な飢餓の主な要因であり、2022年もこの傾向が続くと分析されています。エチオピアには特に懸念があり、北部地域で戦闘が再開され、他のいくつかの地域で紛争や民族間の暴力がさらに激化し、人道支援の需要が高まると予想されています。
洪水、熱帯性暴風雨、干ばつなどの極端な気候現象は、依然として地球上の多くの地域で飢餓の重要な要因となっており、特にホットスポットと呼ばれる国々では、連続した異常気象の「新常態」が明らかになりつつあります。
同報告書は、5シーズン連続の凶作を目前に控え、過去40年間で最長の干ばつが続くと予想されるアフリカの角における飢餓の危機にスポットを当てています。2020年後半以降、相次ぐ少雨、経済危機、紛争が最も弱い立場に置かれた家族に与えてきた累積的で壊滅的な影響は、さらに深刻化することが予想されます。その他、イラクとシリアでは、3シーズン連続で平均以下の降雨量が予測されています。
一方、ウクライナ危機と連動した食料、燃料、肥料などの世界的な価格高騰が続き、国内物価は高騰し、経済が不安定になっています。
人びとへのアクセスが制限されていることも要因の一つであり、ホットスポットと呼ばれる国のうち10カ国では、治安悪化、行政や官僚的な障害、移動制限、物理的な障壁により、急性飢餓に直面している人びとに人道支援を行うことが困難になっています。これには、人びとが壊滅的な食料不安に直面している5カ国すべてが含まれています。
同報告書に追加された国の中には、8月末にモンスーンによる壊滅的な洪水が116の地区を襲い、3,300万人に影響を与えたパキスタンがあります。ラテンアメリカでは、グアテマラとホンジュラスが追加され、平均以上の降雨が予想されるため、低地で洪水が発生する可能性が高まっています。同時に、平均以下の降雨による農作物への影響が予想されるマラウイも追加されました。
国連WFPは、緊急の食料需要に迅速かつ大規模に対応するため、利用可能なすべての資源を動員しています。飢きんを防ぐための直接的な食料・栄養支援を拡大し、2022年には過去最高の1億5,300万人に届けることを目標としています。
私たちの対応は、何百万人もの人びとが飢えにより亡くなるのを防ぐための緊急食料・現金支援と栄養サポート、国の社会保護制度の支援、そして食料システムの強化の3点に重点を置いています。
飢餓のホットスポットは、見通し期間中に深刻な食料不安が増加する可能性のある地域で、将来的な分析を通じて特定されています。これらの地域は、国連WFPとFAOの現地スタッフおよび技術チームと、紛争、経済リスク、自然災害を専門とするアナリストが参加するコンセンサスに基づくプロセスによって選定されます。この報告書は、「食料危機に対するグローバル・ネットワーク」の下で作成された一連の分析結果の一部です。