中央アフリカの人道危機、ますます深刻に ~ 国連の報告書、「深刻で複雑な緊急事態」に、迅速な食糧と生活支援が必要と訴え~
2機関は、紛争の影響を受けた避難民などに緊急支援として食糧や現金を配布する一方で、長期的にも人々が食糧や収入を獲得できるよう、作付け時期に備えての支援を行い、報告書をまとめました。
食糧支援が必要な人数は1年前想定の2倍以上、160万人
2機関が共同で発表した報告書によると、2012年12月以来の広域にわたる紛争で人々の生活は崩壊し、国中の食糧と換金作物、家畜、生産活動のための重要な資産が失われました。
そしてその結果、紛争の被害を直接的に受けている約160万人の人々が緊急に食糧を必要としており、これは約1年前、2013年2月時点の想定の2倍以上のレベルとなっていることが分かりました。また、3月下旬時点で約62万5千人が家を失い、避難民となっていました。
2013年初頭から、食糧の供給量の減少や商業の崩壊、購買力の喪失により中央アフリカ共和国の人々は、深刻な食糧不足に直面しています。非公式な職業も含めすべての業種で失業率が高く、公務員は何ヶ月も給料が未払いの状態です。
口にできる食材の種類は極端に限られ、動物性たんぱく質の摂取量も急激に減りました。これは健康に深刻な影響を与え、特に子どもたちの栄養状態を悪化させています。
「私が先日、中央アフリカ共和国で会った人々の窮乏状態は本当に深刻なものでしたが、生活と食糧供給を再建するのに十分な規模の支援を行うことができれば、短期的、長期的な展望が開ける望みはあります」とFAO緊急復興部門のドミニク・ブルジョン部長は言いました。
「まず、何よりも暴力を終結させなくてはなりません。同時に、人命の救助と生活の再建が求められています」国連WFPチーフ・エコノミストのアリフ・フセインが述べました。「日を追うごとに緊急支援はより難しく、より費用がかさむようになり、より多くの罪のない人々の命が失われる結果となってしまうのです。」
農業が壊滅、雨季も支援を妨げる
2013年、同国の主要産業である農業は37%縮小し、商業と運送業の大半を担ってきた商業関係者は国外に流出しました。これは車両不足とあいまって、国内の商業、食糧の供給、輸出入産業に大きな打撃を与えています。
「劣悪な治安状況と農業資材の不足により、2014年3~4月に始まる作付けの見通しは厳しい」と報告書は予測しています。GDPの57%を占める農業は同国経済を支える主幹産業で、最も大きな被害を受けた業種です。
今月から始まる雨季で、以前より劣悪だった道路事情はさらに悪化し、支援の車が到達できない場所が多く出てきます。また、雨で食糧の備蓄と農業の準備も妨げられてしまいます。
報告書は、比較的、食糧供給事情が安定した都市部では食品購入用の現金での支援を検討することを推奨しています。現金支援はコミュニティ内のお金の循環を活性化させ、地域経済を再生させるのに役立ちます。現金支援は食糧支援と組み合わせて行うこともできます。
また、報告書は、支援食糧には地元で好まれ、手に入るもの、たとえばキャッサバ、米、トウモロコシなどを入れるべきだとしています。地元で食糧を購入し、同じ地域内で運ぶことは、輸送の負担を軽減し、流動性を高める、とも報告書は述べています。
FAOと国連WFPの取り組み
FAOは中央アフリカ共和国の食糧事情を改善するため、2つの取り組みを行います。一つ目は、種子や農作業道具など農業に不可欠な物資の支援です。4月に始まる作付けの時期に間に合うよう、7万5000世帯に配布します。
もう一つは、400の農家団体や女性の組織が生活を再建し、立ち直る力をつけられるよう支援する包括的な計画です。
国連WFPは中央アフリカ共和国で125万人の女性、子ども、そして男性を支援する計画です。国内避難民への食糧支援、栄養不良の子ども、妊婦、授乳中の母親、HIV/AIDS感染者への栄養強化支援、さらに子どもへの緊急学校給食の提供を行っています。
しかし3月現在、国連WFPが活動に必要な資金の3分の1しか集まっていません。その結果、脆弱な避難民は限られた品目で、量も通常の半分しかない食糧配給を受け取っています。
雨季が到来し、食糧備蓄が底を尽きる今の時期には、支援を必要とする人々が増加します。十分な食糧支援を行う資金が緊急に求められています。この時期は、食糧が最も必要とされている時期なのです。
FAOはこれまで、12.5トンの種を農家に配り、さらに4月中旬には特に被害の大きかったBossangoa、 Bangui、 Bambari、 Bouarの地域の約7万6000世帯に1800トンの種子を配る予定です。
国連WFPは、これらの人々が、食糧難のあまり、農作物を作るための種を食べてしまうのを防ぐため、食糧を配る予定です。