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UNHCR、国連WFPのトップがイラクを訪問 クルド人自治区におけるシリア難民受け入れを称える

UNHCR、国連WFPのトップがイラクを訪問 クルド人自治区におけるシリア難民受け入れを称える
イラクのクルド人自治区へ避難するシリア難民の数が増え続けているのを受け、UNHCRと国連WFPは20万人もの難民を保護しているイラク政府に対し、感謝の意を伝えた。

【UNHCR-WFP 共同プレスリリース】

2013年 8月29日 イラク アルビル

イラクのクルド人自治区へ避難するシリア難民の数が増え続けているのを受け、UNHCRと国連WFPは20万人もの難民を保護しているイラク政府に対し、感謝の意を伝えた。これほどの数の難民を受け入れることは困難を伴うが、イラクの地域政府は国境を開放し、難民キャンプを設営するための場所を提供している。

シリアとの国境から70キロ離れた場所に位置するイラクのドミズ難民キャンプでは4万5000人のシリア難民が避難生活を送っている。このドミズ難民キャンプを訪れたアントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官はこう語った。「この大量の難民の流入は、イラクの経済とインフラを圧迫していることを意味している。隣国で紛争が絶えないという現状は、イラクにとって脅威である。保護を必要としている多くのシリア難民を迎え入れてくれた政府とクルド人自治区 に暮らす人々に対して、深い感謝の意を伝えたい」

グテーレス国連難民高等弁務官とともにドミズ難民キャンプを訪れたアーサリン・カズン国連WFP事務局長は「我々は助けを必要としている人々のためにここにいる。我々は、政府が国連機関と連携して支援活動を続け、シリア難民が助けを必要としている限り、支援を続けることをお伝えしたい」

グテーレス国連難民高等弁務官と、カズン国連WFP事務局長はドミズ難民キャンプ訪問後、アルビルの近くのカウェゴスト(Kawergost)難民キャンプを訪れた。カウェゴスト難民キャンプは砂埃が舞う平原に緊急で設営されたキャンプであり、ここ2週間の間に到着した何千人ものシリア難民がここに避難している。この日は1200人を超えるシリア難民が途絶えることなく国境を超えてこの場所へ難民登録のためにやってきた。

シリア難民の半数以下はこのような難民キャンプで生活しているが、大多数のシリア難民は仕事を見つけられる都市での避難生活を望んでいる。シリア国内での紛争の激化と不安定な治安、公共サービスの欠如などを受け、多くのシリア人がハッサケやアレッポからイラクへと避難している。この中には、少数ではあるがダマスカスやラッカなどから逃れてくる人々もいる。

「国民が命を落としたり、避難を強いられたり、公共サービスが機能しなくなるなど国家が事実上の破壊状態に陥ったとき、隣国がなすべき最も重要なことは国境を開放することである。クルド人自治区の支援のあり方は、困難を内包する世界における平和と安定に隣国が貢献できることを体現している」グテーレス国連難民高等弁務官と、カズン国連WFP事務局長はこのように語り、国際社会の支援を寄せることを約束した。

グテーレス国連難民高等弁務官と、カズン国連WFP事務局長は、クルド人地域政府大統領 あるマスウード・バラザーニー(Masoud Barzani)氏と面会し、同地域大統領はシリア難民の受け入れを続けると約束した。

またアルビル州知事ナウザド・ハディ(Nawzad Hadi)氏は、増え続ける難民の数と、今後の気候の変化を考慮し、難民キャンプを拡大して住環境を改善する必要性を訴えた。さらにハディ氏は、「時間は待ってくれない。冬に向けて準備をせねばならない」と危機感をあらわにした。ともに難民キャンプを訪れたイラク内務大臣のカリム・シンジャリ(Karim Sinjari)氏は、シリア難民の受け入れを表明したが、支援するための物資が乏しい現状を訴え、国際社会からの支援に大きな期待を寄せていることを伝えた。

難民キャンプの運営に加え、UNHCRはシリア難民に身分証明書を発行し、難民一人ひとりのニーズを把握しながら難民登録を行っている。UNHCRは他の国連機関やNGO、難民を受け入れている自治体との密な連携によって支援活動を行っている。

国連WFPは難民ひとりにつき毎月31米ドル分の食糧引換券を配布している。カズン国連WFP事務局長は「これは難民を受け入れている地域で、1050万米ドル規模のビジネスが展開されている計算になる」と説明した。「食糧引換券の配布により、難民たちは自分のために新鮮で栄養のある食糧を入手できると同時に、受け入れ地域の経済の活性化に貢献できる。」カズン国連WFP事務局長は、支援を待つ人が増え続けており、国際社会からの支援は不可欠であることを強調した。国連WFPがシリア及び周辺諸国でシリア人のための支援活動を行うには、毎週3000万米ドルの費用がかかる。

8月28日、グテーレス国連難民高等弁務官と、カズン国連WFP事務局長はイラクのアンバー州を訪れ、シリアとの国境を視察した。この国境は一年以上閉鎖されているが、地元当局 支援を必要としている一部のシリア難民を受け入れ、家族の再統合プログラムを立ち上げることを検討している。

グテーレス国連難民高等弁務官はシリア紛争について「今世紀最大の平和と安定への脅威である。我々は死と破壊、国家の崩壊、人々の苦しみを目撃している」と語った。さらに、シリア国内で避難を強いられている国内避難民が数百万人に達し、国外へ逃れる難民の数が200万人に近づく中、人道支援を行っているすべての組織の予算が必要額を下回っていることを訴えた。

しかしグテーレス国連難民高等弁務官とカズン国連WFP事務局長は、支援を必要としている全てのシリア難民を支援すると表明した。グテーレス国連難民高等弁務官は「我々はここ2年以上、様々な危機を目撃してきた。そして常にその危機に対処すべく支援活動をおこなってきた。我々の決意は被災者とともにある。どんな状況で何が起ころうとも、支援を必要としているシリア難民に手を差し伸べるために努力を続ける」と語った。