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食糧価格高騰 −途上国の人々とWFPの支援活動への影響

食糧価格高騰 −途上国の人々とWFPの支援活動への影響
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食糧価格が高騰しています。国際連合食糧農業機関(FAO)が1月に発表した食料価格指数は、231ポイント。過去最高値だった2008年の213.5ポイントを上回り、FAOが統計を取りはじめてから最高値を更新しました。

食糧価格の高騰により、途上国の人々やWFPの食糧支援活動にはどのような影響があるのでしょうか。

途上国の人々への影響

食糧価格高騰で一番大きな打撃を受けるのは、一日一ドルや二ドルといった大変少ない生活費で暮らすことを余儀なくされている、貧しい人たちです。収入の大半を食費に充てているため、少しでも食糧の値段が上がると、同じ額で買える食糧の量が減ってしまうからです。

世界銀行は、昨年6月以降、食糧価格の高騰により貧困層が4400万人増加したと推定されると発表しました。(詳しくはこちら)

食糧価格高騰の打撃を受けている国の例として、6か国の事例を見てみましょう。

ボリビア

ボリビアでは食糧価格の上昇が著しく、インゲンマメは2010年に比べて179%、小麦は44%、コメは33%上昇しました。特に昨年12月、ボリビア政府が燃料への補助金を一時停止し、ガソリン価格が70%も上昇したことから、同月に食糧価格は大きく上昇しました。

スーダン

スーダン政府が燃料、砂糖、その他の輸入製品への補助金を中止してから、インフレが進んでいます。1月に入り、ガソリン価格が急上昇したのに伴い、消費者物価も15.4%上昇しました。

ハイチ

2010年1月の大地震以来、ハイチでは食糧価格が高騰しました。2010年の終わり頃には価格は安定しましたが、現在、再び地震直後の水準にまで上昇しました。ハイチは食糧価格高騰の影響が最も大きい国であると指摘する報告もあります。

キルギス

キルギスの小麦の価格は2010年1月から40%も上昇し、中央アジアで最も高値となっています。キルギスは穀物をロシアからの輸入に頼っており、ロシアでの不作や禁輸措置により大きな打撃を受けました。

アルメニア

アルメニアの食糧価格は昨年12月、26%上昇したという報告があります。アルメニアは内陸国で食糧を輸入に頼っているため、国際市場の食糧価格高騰の影響を受けやすい状況にあります。アルメニアの人々はもともと収入のおよそ半分を食費に充てていましたが、食糧価格が高騰したことによりさらに収入に占める食費の割合が高くなり、さらに厳しい危機に直面しています。

ソマリア

ソマリアでは、不作の影響で、昨年9月からトウモロコシとソルガムの価格が80%上昇しました。食糧価格が上がったことで、人々は収入の6割から8割を食糧の購入に充てていると考えられます。

WFPの支援活動への影響
食糧価格が高騰すると、WFPの食糧支援を必要とする人の数が増えます。しかし、同じ金額で買える食糧の量が減ってしまうため、支援活動にはより多くの資金が必要となってしまいます。

予定通りの人数に予定通りの量を配給するには、追加の資金が必要となりますが、追加資金が得られなければ、、飢餓に苦しむ人々へ配られる食糧が減ってしまいます。

現在のところ、以下のような対応を取ったため、支援活動への影響は最小限に抑えられています。

1)途上国からの現地調達
WFPは食糧支援に使う食糧のほとんど(320トンのうち260トン)を支援活動が行われる国内やその周辺諸国で購入しているため、世界的な食糧価格高騰の影響はまだ予想よりは小さいものに留まっています。

2)事前購入
事前購入とは、将来購入する食糧の購入価格を売り手とあらかじめ合意しておくことです。WFPは、価格が比較的安かった2010年のうちにこうした取り決めをいくつか行っていたため、食糧価格上昇の影響を受けるまでには一定の時間の猶予があります

3)食糧の備蓄
WFPは食糧が将来必要になりそうな所へ、あらかじめ食糧を備蓄しています。この備蓄により、食糧価格上昇の影響を受けるまでには一定の時間の猶予が生じます。

昨年の11月より、WFPの活動コストは14%上昇しました。WFPは、食糧価格が10%上昇するごとに、食糧購入のための予算が2億ドル余分に必要となると試算しています。このまま食糧価格の上昇が続いたり高止まりしたりした場合、追加資金が得られなければWFPは資金不足に陥り、配給する食糧の量を減らすか、人数を減らさなければならなくなる恐れもあります。