世界食糧デー: いまだに4億の子供が飢えているのはなぜか
ローマ発 – 10月16日の世界食糧デーを記念した講演で、ジェームズ・モリスWFP世界食糧計画事務局長は今日、世界の4億の飢えた子供たちにより公平な機会を与えるよう先進国に要請した。そうした子供の多くは生後数ヶ月間の栄養不良のために人生に暗い影がさしたままになっている。
飢餓と栄養不良はしばしば子供にとても深刻な影響を及ぼす。新たな研究によると、生まれて間もない時期の急激な脳の発達は極めて重要であり、一生を通じて学習能力・行動様式・健康状態を左右する。そうした時期に飢餓状態にあった子供は、脳の発達に悪い影響を受け、その後の人生における成功のチャンスを妨げられる。
「人間の脳は生まれて最初の2年間で70%が発育することから、乳幼児期の栄養不良は壊滅的な影響を及ぼす可能性があります。歩行や会話を始める前に、そうした子供たちは既に遅れをとっています」とモリス事務局長は語る。
チリの研究調査では、2歳未満で栄養不良だった子供は栄養状態のよい子供に比べて脳が小さく発達も遅れ、その結果知能指数(IQ)も低いことが明らかになった。
別の研究によると、2歳以下の子供の鉄分欠乏は学齢期になったときの成績不振に関連する可能性がある。同様に、発育不良の子供は学校に通い始める時期が遅れるので何年分もの教育機会を失うことがある。それに比べて、栄養状態の良い子供は学校での成績が著しく優れている。
「この研究結果から得られる結論は、教育プログラムに食糧を組み入れること、つまり学校給食の重要性です。早い時期から食糧を与えて子供の生存と発達を手助けすることで、栄養改善の効果は非常に大きなものになります。さらにいえば、子供の飢えをなくすためには、子供が生まれる前、つまりその母親の状況を改善することから始めなければなりません」とモリス氏はいう。
モリス事務局長は、先進国では子供の持つ可能性を伸ばすような教育を受けさせる機会と技術が豊富であるのに対し、世界の最貧の地域では、子供の発達を後押しするための資金が非常に限られているという現実に触れた。ニジェール、チャド、バングラデシュなどの国々では、数百万人の子供が全く学校に通えないでいる。というのも家庭では食べていくために誰もが働かなくてはならないからだ。
「自分の子供に最善のものを望むのは悪いことではありません。むしろそう望まない方が不自然です。けれども、子供のパソコンを買い換えたり、塾の授業を予約したり するときには、キーボードに触れることもない数百万の子供のことを考えてほしいのです。その子供たちは基本的な読み書きと計算を習えるだけで運がいいとされるのです。」とモリス事務局長は語った。
「私たちは世界を変えることができます。世界には有り余る食糧がある。たとえばイタリアには国民の栄養所要量を満たした上で、残りをエチオピアの栄養状態の悪いすべての人々に回せるだけの十分な食糧があります。フランスでは『余剰分』でコンゴ民主共和国の飢餓をなくすことができるし、米国にいたってはアフリカ全体の飢餓を解消できる」とモリス氏はいう。
「政府開発援助(ODA)は数年にわたって着実に増えており、現在1000億米ドルとこれまでの最高額です。金銭的には私たちは支援する能力を備えていますが、必要なのは食糧難の解決を最優先事項とすることです。貧困は飢餓と栄養不良の問題が解決されない限り、撲滅できません。取り掛かりはまず飢えによって子供たちの希望が奪われないようにすることだと思います」とモリス事務局長は締めくくった。
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本件記事についての問い合わせ先:
WFP 国連世界食糧計画日本事務所 広報担当 保田由布子(ヤスダユウコ)