飢餓をゼロに
世界から飢餓をなくすことは、現代における最大の課題の一つです。2023年に飢餓に直面した人は最大約7億5,700万人で、これは世界では11人に1人、アフリカでは5人に1人に相当します。また2024年8月にはスーダンで飢きんが確認され、人口の約半数の2,560万人が急性の飢餓に直面しています。
ビタミンやミネラルなどの栄養素が乏しい食生活の結果、さらに何百万人もの人びとの健康や生活の見通しに影響を与え、地域社会や国全体の未来に影を落としています。
この地球上のすべての人が食べるのに十分な食料は生産されているにも関わらず、持続可能な開発のための2030アジェンダ、特に持続可能な開発目標2「飢餓をゼロに」という目標は、紛争、気候変動、災害、構造的貧困と格差という問題が絡み合ってるために、達成が難しくなっています。過去2年間、新型コロナウィルス感染症の流行による社会経済的影響は、何百万人もの脆弱な人びとをより深刻な食料不安に追いやり、支援を届けるためのコストを押し上げることで、世界の飢餓をさらに悪化させました。国連WFPは飢餓の解決策を模索するため、さまざまな活動に取り組んでいます。
飢餓の主な原因と国連WFPの対応
紛争
世界の飢餓人口の60%は紛争の影響を受けている地域に住んでいます。最も深刻な飢餓の危機にある10ヵ国中8ヵ国(イエメン、南スーダン、コンゴ民主共和国、シリアなど)では、紛争がその主な要因となっています。
国連WFPの活動
食料・栄養支援
国連WFPは、戦闘によって身動きできなくなったり、避難を余儀なくされた人びとへ、どこであっても命を救うための食料と栄養の支援を提供しています。現地のパートナーの協力を得て、最も遠隔な地域でも、他のあらゆる手段がない場合でも、全地形対応車を使用したり、飛行機から食料を投下したりして、支援を必要としている人びとに手を差し伸べています。
平和への展望
ストックホルム国際平和研究所との共同の予備調査の結果では、国連WFPの活動は、争奪されている天然資源へのアクセスの向上、社会的結束の強化、コミュニティ内やコミュニティ間の不満の解決、また国家の説明責任とサービス提供の強化を通じて人びとと政府間の機会や信頼を高めることにより、平和への展望の改善に寄与していると指摘されています。この調査は、エルサルバドル、イラク、キルギスタン、マリを対象としました。
気候変動
洪水や干ばつなどの気候変動に関連するショックは、何百万人もの人びとの命と生計に影響を与え、貧困や飢餓を悪化させ、社会的緊張を高めます。国連WFPは、政府や地域社会がこうしたリスクの高まりについて理解し、気候変動による食料安全保障への影響に対処するための適切な対策を講じることができるよう支援しています。
国連WFPの活動
予測型現金支給
国連WFPの予測型現金支給は、気象予測に基づく早期警戒を改善したものを利用しています。コミュニティは気候関連などの事象を15日前に警告され、準備措置を講じるための保険が提供されます。
気候に対応したエネルギー解決策
国連WFPは、人びとが安全に調理し、食料を消費できるよう、ガスコンロ、ミニガス化炉、電気圧力鍋などの近代的な調理ソリューションへのアクセスを促進しています。また、国連WFPは、生産的な用途のエネルギー機器やサービスを持続的に普及させ、農業市場の発展を促進することで、小規模農家のエンパワーメントに努めています。
災害
地震やサイクロン、ハリケーンなどの災害が発生すると、国連WFPは直ちに対応し、すべてを失った人びとに食料や命を救うための支援を届けます。
国連WFPの活動
ロジスティクス
国連WFPは、機関間のロジスティクス・クラスターのリーダーとして、大規模災害への対応における調整と情報管理を行います。
通信
国連WFPは、緊急通信クラスターを主導し、緊急事態において命を救う通信手段を提供しています。国連WFPのFITTEST(Fast IT and Telecommunications Emergency and Support Team of Responsers)は、通信と情報技術ネットワークの確立と復旧のために、世界のどこにでも展開できる体制を整えています。
地理空間分析
対象を絞った地理空間分析によって、自然災害の影響が即座にわかるため、ニーズに合った迅速な対応が可能となります。ADAM(Automatic Disaster Analysis & Mapping)などの地理情報システムツールは、地震や熱帯低気圧のマッピングを24時間365日体制で提供しています。
不平等・格差
不平等は、人びとの機会を制限し、飢餓の度合いを悪化させます。例えば、雇用、金融、市場へのアクセスを向上させることで、人びとは貧困から迅速に抜け出し、生産性と消費力を高め、地域の市場を活性化させることができます。
国連WFPの活動
フード・フォー・アセット(Food Assistance for Assets)
国連WFPのフード・フォー・アセット(Food Assistance for Assets)プログラムでは、生産性の低い土地の修復などのコミュニティ・プロジェクトに参加してもらう労働の対価として現金や食料を提供しています。民間部門に焦点を当てた(ファーム・トゥ・マーケットアライアンス(Farm to Market Alliance)は、小規模農家と市場を結びつけ、作物の多様化やビジネスの可能性を高める支援を行っています。
現金支給
市場や金融システムが機能している地域では、国連WFPは現金による支援を行っています。紙幣、バウチャー(食料引換券)、デビットカード、電子マネー、モバイルマネーのいずれの形態であっても、現金支援によって、人々は食料安全保障と栄養状態を改善するための選択をすることができ、地域経済に現金を注入することができます。
社会的セーフティーネット
国連WFPは、貧困、格差、食料不安から国民を守るために、各国政府が導入している社会的セーフティネットの強化を支援しています。また、災害や大規模な人口移動などのショックに対応できるよう、これらのシステムの強化にも取り組んでいます。
食品ロス
>農場の保管設備が悪いと、害虫が発生したり、カビが生えたりして作物がダメになってしまいます。しばしば技術や市場へのアクセスないため、農家の多くは収穫に必要な労働力や資金が得られず、作物は畑で腐ってしまいます。
国連WFPの活動
収穫後の食品ロスをゼロに
国連WFPの収穫後の食品ロス・ゼロ・プロジェクトは、小規模農家が、虫やネズミ、カビや湿気から作物を守るために、シンプルで効果的な密閉式貯蔵装置と組み合わせた収穫後のより良い処理方法を学ぶことを支援しています。
新型コロナウイルス
新型コロナウイルスの大流行により、生産、貿易、生活が破壊され、数百万人が仕事を失い、さらに数百万人が食料不足に陥っています。
国連 WFP の活動
航空輸送サービス
国連WFPは、航空輸送サービス(世界規模の旅客・貨物輸送サービス)を立ち上げ、人道支援者や食料、保健・医療物資を届け、世界中の脆弱な立場にある人びとが最も支援を必要とする時に支援が絶たれないようにしています。
食料・現金支援
新型コロナウィルスの流行による社会経済的な影響から生じるニーズの増加に対応するため、国連WFPは現金支給と食料支援を強化し、各国政府が独自の社会的セーフティネットを強化するのを支援しています。