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エル・ニーニョ現象とは? 飢餓にどのような影響を与え、WFPはどう対応しているのか?

過去最強クラスのエル・ニーニョ現象が発生し、脆弱な地域で食料不足が悪化する可能性があると予測されています。エル・ニーニョとは何か、そしてWFPが災害の発生前からどのような対策を進めているのかをご紹介します。
, WFP staff
Child with backpack walks through knee‑deep floodwater, holding shoes, as homes, trees and debris line a flooded street in a damaged neighbourhood.
2024年、エル・ニーニョによる豪雨でタンガニーカ湖が氾濫したコンゴ民主共和国東部のウビラで、冠水した場所を歩く子ども。Photo: WFP/Benjamin Anguandia

エル・ニーニョエル・ニーニョは、世界の気象や気候条件、そして飢餓に最も大きな影響を与える要因の1つです。今回のエル・ニーニョはすでに発生しており、2026年を通じて勢力を強め、2027年まで続くと予測されています。過去最強クラスとなる可能性もあり、脆弱な地域では食料不足の悪化が懸念されています。WFPとパートナー組織は、洪水や干ばつ、暴風雨が発生する前から人びとが備えられるよう、すでに対策を進めています。早期に行動することで、その後に必要となる人道支援を減らすことにもつながります。

エル・ニーニョとは? なぜ食料不足の危機につながるのか?

エル・ニーニョは、「エル・ニーニョ・南方振動(ENSO)」と呼ばれる自然な気候変動の一環で、海面水温が平年より高くなる現象です。エル・ニーニョは世界各地の気象パターンを変化させ、洪水、干ばつ、暴風雨、火災、熱波などのリスクを高めます。

エル・ニーニョにより、ある地域では干ばつが、別の地域では深刻な洪水が発生し、場合によってはその両方が起こることもあります。こうした異常気象は農作物や家畜、インフラに被害を与え、食料生産を減少させ、市場を混乱させます。供給量が減れば価格が上がり、食料は手に入りにくくなります。特に、雨に頼って農業や牧畜を営む小規模農家や牧畜民は大きな影響を受けます。そこに紛争などの問題が重なると、飢餓は急速に深刻化します。

また、エル・ニーニョが世界の主要な食料生産地域に影響を及ぼせば、食料の供給量や価格への影響は被災地域だけにとどまらず、食料安全保障上のリスクを増大させる可能性があります。

エル・ニーニョ現象とラニーニャ現象の違いは?

エル・ニーニョとラニーニャは、同じENSOサイクルで起こる正反対の現象です。

  •  エル・ニーニョでは海面水温が平年より高くなり、降雨パターンが変化して、ある地域では干ばつ、別の地域では大雨をもたらすことがあります。
  • ラニーニャでは反対に海面水温が平年より低くなり、エル・ニーニョとは異なる形で気象パターンが変化します。ある地域では洪水、別の地域では干ばつをもたらすなど、異常気象につながることがあります。
     

エル・ニーニョとラニーニャは、季節によって発生時期が決まっているわけではありません。同じサイクルの中で交互に現れ、通常は年の途中に発生し、年末ごろにピークを迎え、その後数か月にわたって天候に影響を及ぼします。

どちらも農業や水の確保、食料安全保障に影響を与え、過去には食料危機を引き起こす要因にもなっています。

World map showing El Niño impacts: red areas face drought, blue areas heavy rain, with 22 high-risk countries highlighted across Africa, Asia and Latin America.

なぜ今年のエル・ニーニョが特に懸念されるのか?

専門家の予測では、すでに強い今回のエル・ニーニョはさらに勢力を増し、観測史上最強クラスとなる可能性があります。2026年9月から12月にかけてピークを迎えると予測されています。今後の収穫サイクルにも影響するため、多くの地域では2027年以降も影響が続く可能性があります。

WFPの最新分析によると、エル・ニーニョによって世界でも特に脆弱な国々で飢餓が急速に悪化し、2027年末までに45か国の2億7,400万人が急性の食料不足に陥ると予測されています。これは現在より4,900万人多い数字です。

こうした予測や過去のエル・ニーニョから得た教訓は非常に重要です。干ばつや洪水、不作によって食料生産や収入に影響が出る前に、各国政府やWFPなどの人道支援団体が対策を講じることができるからです。

さらに今回のエル・ニーニョは、すでに食料システムが大きな負担を抱えている中で発生しています。世界各地の地政学的な緊張などを背景に、エネルギーや肥料の価格は高止まりし、作付けの判断や農業生産、食料価格にも影響しています。こうした問題が重なることで、異常気象によってさらに多くの人びとが飢餓に陥るリスクが高まっています。

エル・ニーニョによる食料不足が最も深刻になるのはどこか?

WFPの分析では、すでに貧困や経済の不安定、度重なる異常気象に苦しむ国々ほど、エル・ニーニョによる大きな影響を受けるとみられています。ただし、影響の表れ方は地域によって異なります。すでに平年を下回る降雨量や洪水、異常な高温などの影響が出ている国もあれば、これから影響が表れると予測されている国もあります。リスクの高い地域では、雨水に頼る農業で暮らしている人が多く、災害などの打撃に耐える力も限られています。そのため、わずかな混乱でも食料の供給や入手にすぐに影響する可能性があります。

 

  •  中南米・カリブ地域では、平年より乾燥した天候が予測されています。食料不足が特に大きく悪化する可能性があり、地域全体では50%近く増加し、1,600万人以上に影響するおそれがあります。
  • 東部・南部アフリカでも、1,800万人以上で食料不足が悪化する可能性があります。これは25%以上の増加にあたり、特に南部アフリカが大きな影響を受けるとみられています。
  • アジア・太平洋地域でもエル・ニーニョの大きな影響が懸念され、さらに820万人が急性の飢餓に陥る可能性があります。
  • 西・中央アフリカでは、国によって干ばつとなる地域と平年より雨が多くなる地域の両方が予測されています。食料不足の影響を受ける人は約600万人増加し、12%増となる見込みです。
  • 中東・北アフリカでは、紛争や経済的な問題によってすでに大きな負担を抱える食料システムに、エル・ニーニョがさらなる打撃を与える可能性があります。この地域では、すでに3,300万人以上が飢餓に直面しています。

エル・ニーニョが危機に発展する前に、WFPはどう動くのか?

WFPは、危機が発生する前に行動する事前対策措置に力を入れています。気象予測や早期警戒システムを活用し、地域の人びとに現金支給や食料支援を行うほか、早期警戒情報を提供します。また、灌漑設備や洪水対策などの水関連設備を強化するとともに、貯蓄、融資、保険などを含む災害リスクファイナンスにも取り組んでいます。

2026年5月以降、WFPはチャド、エルサルバドル、グアテマラ、モーリタニア、南スーダン、ウガンダで事前対策措置を開始しました。1,400万米ドル以上の早期支援を行い、約50万人が予測されるエル・ニーニョの影響に備えられるよう支援しています。その一環として、災害リスク保険、融資、デジタル決済など、あらかじめ用意した資金調達の仕組みを拡充し、より少ないコストで多くの資金を利用できるようにしています。 

事前対策措置は、命を守るだけでなく時間と費用も節約します。早期に行動すれば、インフレや食料不足、災害後の債務を抑えることにもつながります。危機が発生する前のほうが物価も安く、例えばバングラデシュでは、洪水が起きてから家畜の飼料を調達するより、発生前に調達するほうが15%安くなります。

事前対策措置への投資は、1米ドル当たり最大7米ドル相当の人道上の損失を防げることが分かっています。南部アフリカでは、2023~2024年にエル・ニーニョによって発生した干ばつについて控えめに試算しても、予測的措置への投資は、従来型の緊急対応と比べて、支援を受ける人々に30%の純利益をもたらしました。

なぜ早期に行動するほうが、事後に対応するより費用を抑えられるのか?

エル・ニーニョは事前に予測できるため、影響が最も深刻になる前に対策を講じることができます。事前対策措置への1米ドルの投資で、最大7米ドル相当の損失を防ぐことができます。簡単にいえば、災害が起きてから生活を立て直すよりも、その前に暮らしや生計を守るほうが費用がかからず、家族にとってもより良い結果につながります。早い段階で支援を行うことで、人びとがさらに深刻な危機に陥るのを防ぐこともできます。

早期の対策は、農作物や家畜、収入を守り、多額の費用を要する緊急支援や長期にわたる復興の必要性を減らします。

2026年5月以降、WFPはチャド、エルサルバドル、グアテマラ、モーリタニア、南スーダン、ウガンダで事前対策措置を開始し、1,400万米ドル以上の早期支援を提供して、約50万人が予測されるエル・ニーニョの影響に備えられるよう支援しています。

なぜWFPがエル・ニーニョのような緊急事態に対応できるのか?

WFPは、世界各地で活動するネットワーク、早期警戒システムに関する専門知識、そして大規模な支援を実施できる体制を生かし、食料危機の発生前から発生後まで対応しています。また、各国政府による緊急対応準備や対応体制の強化も支援しています。

エル・ニーニョのように気候リスクを事前に予測できる場合には、被害が発生する前から対策を講じられるため、こうした取り組みが特に重要になります。

2023~2024年のエル・ニーニョでは、WFPとパートナー団体が、干ばつの被害を受けた南部アフリカなどで数百万人に早期支援を届けました。これにより、状況が悪化するなかでも、農作物や家畜を守り、必要な食料を確保し、被害を抑えることができました。

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