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ノーベル平和賞:国連WFP、アプリによりアフガニスタンの紛争と気候変動に対処

, WFP日本_レポート

マッピング技術は、山岳地帯を横断する国連WFPのスタッフが弱い立場に置かれた人々にアクセスするための安全なルートを特定するのに役立っています。

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道路が大雪で塞がれる前に、バダフシャン州北東部の遠く離れた到達困難な地域に食料を配達する国連WFPのトラック Photo: WFP Afghanistan

国連WFPスタッフによるレポート

「国際連携と多国間協力の必要性はかつてないほど顕著になっています」と、国連WFPを2020ノーベル平和賞受賞者に指名したノルウェーのノーベル委員会は声明を出しました。その声明の中で委員会は、「食料の確保、入手にかかる支援を提供することは、飢餓を防ぐだけでなく、安定と平和の見通しを改善するのにも役立っていることを強調したい」と述べています。

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さらに声明文は続きます。「2019年には、1億3500万人が急性の飢餓に苦しんでおり、過去最高の数となった。増加のほとんどは戦争と武力紛争によるものだった。」ノーベル委員会は、国連WFPが「人道的活動と平和への取り組みを組み合わせることで主導権を握ってきた」としています。その主導権を維持するために、国連WFPは革新を続けなければなりません — その革新の一例はアフガニスタンで見ることができます。

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パルヴァーン州チャーリーカール:7人の家族が鉄砲水で流されてから数日後の9月に食料支援を受け取るビビ Photo: WFP/Wahid Amani

アフガニスタンでは40年間、紛争が絶え間なく続いています。苦難と度重なるショックが人々の全体的な回復力を蝕み、多くの人々が基本的なサービスを受けることができなくなっています。

内陸国のもともと曲がりくねったわずかな山間部の道路が、干ばつや洪水、雪崩などで塞がれてしまうこともありますが、国連WFPのトラック輸送隊は複雑な紛争の網の中を移動しながら、弱い立場に置かれた人々に食料を届けます。

そんな中、国連WFPは地理情報システム(GIS)の大手企業と協力して、ゲームチェンジャーとなりうるマッピング技術を開発しました。

「このツールは、アフガニスタンでの活動やアクセス道路のナビゲーションに役立っています」と、国連WFP のアフガニスタン事務所代表を務めるトバート・カスカは述べます。「今日の非常に複雑な現場においては、最新のマッピングツールなしでの作業は考えられません。」

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新型コロナウイルスの世界的大流行の影響を受けた女性たちは、カブールで国連WFPの支援を待っています。Photo: WFP/Massoud Hossaini

ローマにある国連WFP本部のGIS責任者であるティエリー・クレヴォワジエは、次のように述べています。「最初に把握しなければならないのは、食料支援を必要としている人の数とその場所です。次の焦点は、アクセスできる領域とその方法を決定することです。」

ここで、技術革新以外のことに焦点が当てられます。国連WFP は新しく世界的な「受入れ政策」を開拓しています。この政策では、コミュニティは受動的な支援受領者とはみなされず、安全保障を提供し、プログラムの実施において利害関係者となることを求められます。

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チャーリーカール:国連WFPはアフガニスタン全土で食料支援のための安全な通行を求め交渉します。Photo: WFP/Massoud Hossaini

人道的、中立性、公平性、運用上の独立性という人道主義の原則に沿って、遠隔地への安全な回廊を確保するために、国連WFPはすべての利害関係者と話し合います。彼らは、弱い立場に置かれた人々へ安全にたどり着くために通過しなければならないルートのゲートキーパーなのです。

「アフガニスタンの国連WFPのセキュリティ責任者であるヘンリー・チェンバレンは、「必要としているすべての人々に手を差し伸べなければならないため、私たちは政府が管理する地域のみに限定はしていません」と述べます。「私たちは、領土やアクセスを管理している多くの非国家武装グループ(NSAG)と協力し、活動を続けています。」

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ヘズラテ・スルタン地区を走るこのような国連WFPの車両は、マッピングデータによって運転されています。Photo: WFP/Silke Buhr

米国国防総省が発表した2020年7月の安全と安定に関する報告書によると、アフガニスタン政府はカブール、州都、主要な人口密集地、主要な補給路の支配権を維持しています。しかし、現在のタリバンの勢力と武装のレベルは、ドーハで和平交渉が進行中であるにもかかわらず、過去最高レベルにあります。タリバンが従来の治安構造を徐々に侵食し、支配地域を拡大しているのです。

データに基づいた国連WFPのアプローチでは、支援を届け受け入れてもらう前に、誰と交渉し、関係を構築するかを決定します。これは、国連WFPの人道支援部隊が、武装勢力の標的となる可能性がある軍当局の護衛からの脱却を意味し、かつては危険すぎると考えられていた地域へのアクセスを容易にします。

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道をきれいにするドライバー。リアルタイムのデータを中継し、マッピングを最新の状態に保つことができます。Photo: WFP Fleet

「これにより、多くの地域での輸送が改善され、セキュリティ事故を回避することができました」とチェンバレンは述べています。

NSAG の支配下にある地域への実地任務については、「その任務の地理的限界、紛争のホットスポット、優先地域を明確に把握することができるようになりました」と彼は話します。「輸送部隊のトラックルートを見ることで、どこが安全で、支援が得られる場所なのか、驚くほどの情報を得ることができます。」

救助のための技術

ファラクナズ・カーンは、カブールの「Loggie」つまり物流の専門家で、道路の不足を指摘しています。「私たちがサービスを提供している場所のほとんどは、冬の間はアクセスできません」と彼は言います。

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SArcGISアプリの降雪インジケーター Photo: Earthlight Geographics

「雪が溶け始めるとすぐに 4月から5月にかけて 雨が降り始め、時には6月まで降ることもあります。道路がぬかるんでいると、ミッションがキャンセルされたり、遅配が発生したりします。」

エビデンスに基づいた意思決定を行い、スタッフの行動を支援するために現場のデータをマッピングアプリで共有したおかげもあって、国連WFPは8月にアフガニスタンで100万人以上の食料不安のある人々に手を差し伸べました。

物流データは技術的で複雑になります。

GIS担当のティエリー・クレヴォワジエは次のように述べています。「私たちは、物流ルートを計画したり、どのトラックでどの道路にアクセスできるかを確認するために、輸送ネットワークを使用して参照マップを作成しています。彼のチームはまた、現在の食料ニーズ、食料がどこから来て、どのくらいの量になるのかを示すためのオペレーションマップも作成しています。

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8月26日に発生した鉄砲水に対応するための物流拠点 Photo: WFP/Massoud Hossaini

「私たちは通常、セキュリティだけを目的とし情報ツールを構築します。」と、ローマにある国連WFP本部の緊急事態部門の地理空間ユニットの責任者であるララ・プラデスは言います。「しかし今回は、国連WFPのさまざまな分野のデータセットを一堂に集めました。」

ArcGIS Survey123 アプリのさまざまなタブを使用すると、ユーザーはさまざまなレイヤに移動し、セキュリティ、サプライチェーン、脆弱性分析、マッピング、またはプログラム目標の監視を行うことができ、あらゆる人の点と点をつなげることができます。

地上のドライバーは、状況の変化に関する情報を収集して報告します。輸送部隊の管理者がドライバーから情報を収集し、組織全体がこの最新情報から恩恵を受けます。

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国連WFPは技術を活用して危険を克服しています。Photo: WFP/Hukomat Khan

国連WFPの新しいシステムは、アフガニスタンの複雑なセキュリティ上の課題に対処するために4年前にスタートしました。それ以来、国連WFPの自立支援、現金支給、食料支援、母子栄養支援など国連WFPのミッションのさまざまな側面を取り入れながら進化してきました。

ノーベル委員会が述べているように、「世界が想像を絶するほどの飢餓危機を経験する危険にさらされている」とすれば、このような進歩は、飢餓ゼロの達成に向けて一歩近づくことになると、プラデスは述べます。

これにはチェンバレンも同意します。「以前は、セキュリティ業務を盲目的に実行していましたが、データ主導のオペレーションは、重要なセキュリティ上の意思決定を行うために必要な情報を提供してくれます。これなしでは生きていけません。」